第26話 威圧
部屋に入ってきた背の高い女性にサラサは挨拶をしている。
「ツバキギルド長、この度はこちらの冒険者ミロードの指名専属嬢として配属されましたサラサと申します、宜しくお願い致します」
「うむ、長旅ご苦労様。」
ツバキギルド長は俺を見た後にセツナを見て驚いている。
「お主、セツナ殿か?」
「ああ、そうだが」
「また冒険者ギルドに帰ってきてくれたのね?」
「アホか、この紋章をよく見ろ。俺はミロード様の奴隷だ」
その言葉を聞いたツバキギルド長は俺にもの凄い威圧を放ってきた。
セツナが瞬時に俺の前に立ち剣を構えた。
「おい、喧嘩を売っているのか?」
「そ、そんな…セツナ殿に喧嘩を売るなんて、むしろ愛してます」
「えっ」
俺は思わず声にでた。
この国の女性は積極的なのか?
「セツナ知り合い?」
「うーん、エルフに知り合いは…ないな」
「存じないのも無理はないです。私は以前の氾濫のことを聞いてすぐにここに志願して来たのですが、その時にはセツナ殿はいなくて…」
「それで何故ミロード様に威圧を放った?」
「スミマセン、セツナ様に憧れていまして。その者が無理やり奴隷にしていると思い…。」
「俺の意思でこの方の奴隷になった、次に同じことをしたら切ると思え」
セツナにきつく言われショボンとしているギルド長。
「スミマセンがそろそろ本題に入ってもいいですか?」
この空気を裂くかのようにサラサが割って入った。
「有望な冒険者をギルドにお連れしましたので、後ろの本部にて登録しても宜しいでしょうか?」
「あ、ああ、セツナ様が自ら奴隷になるほどなら問題ない。冒険者ギルドを出て後ろの本部にて手続きをするとよい」
そう言うとツバキギルド長は承認の用紙を渡してくれた。
なるほどー、この街のギルドの裏手に冒険者ギルド本部があり、別々の対応をしているようだ。
それはそうか、ギルドの依頼と本部の要件は違うもんな。
「あ、そうだ、一つ聞きたいんだけど…、憧れるのはわかるけど会った瞬間に好きになるものなの?」
「私は氾濫後にセツナ殿の人となりを知り、吟遊詩人の歌を聞きながらずっとセツナ殿を待っていたのだ。憧れの人を目の前にして理性が飛んだ感じだな」
「そう、セツナの恋は自由だから頑張ってね」
その言葉を聞いたツバキギルド長はパッと花が咲いたように笑顔になった。
「おい、俺の気持ちは?」
「嫌なら断ればいいいさ。セツナは自由だって言いたいだけだよ」
「あ、よければ私がお金を払いますので奴隷から解放とかは…」
「おい、俺の気持ちは?」
「そうだねー、あ、冒険者ギルドで買い取ったって言う精霊族の奴隷を開放してくれるなら考えてもいいよ」
「だから、俺の気持ちは…、あっ」
セツナは気付いたみたいだ。
「あー、精霊魔法のスキルを持ちながら喋れない女の子のことだな?」
「喋れないんだ。セツナがその子にお礼がしたいって言ってたから」
「確かに言ったが、俺が奴隷から解放されるのとは別じゃ…」
「いいじゃん、その子もセツナも幸せになれるなら」
「リーリアは本部預かりとなっておる。私の一存じゃ…。」
「えー、ギルド長だし頑張ってよ。セツナを奴隷から解放できるチャンスだよ」
「そ、そうだよな、本部に乗り込んでくる」
そう言うなりツバキギルド長は凄いスピードで本部に向かっていった。
「おい、奴隷解放とは聞いてないぞ」
「別に奴隷でも奴隷じゃなくても一緒にいるらな関係ないよね」
「ま、まあ、一緒にいるなら…そ、そうだな」
「なんで男二人でイチャイチャしてるの?私も混ぜてよー」
「サラサに間違って変なこと言うと逃げれらくなりそうだからな」
「逃げなくていいじゃない。隣りにいれれば私も愛人でもいいわよ」
「アハハ、考えとくよ」
「ちなみに精霊族の子は喋れないんだね?」
「確かそんなことを言ってたな。俺の身の回りの世話は同じ奴隷がしてくれてたんだけど、ほとんどの奴隷は俺の待遇が気に入らないのか嫌そうにしていたが、あの子だけは嫌がらずに世話をしてくれた。俺が病んでた時も真剣に愚痴を聞いてくれて感謝しているんだ」
「そうなんだ。今の状況は分からないけど、そんな子なら幸せになって欲しいよね」
サラサとセツナは共に頷き、俺達もギルド本部に向かうことにした。
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