第24話 奇跡
2、3日様子を見終わってから、セツナの手足を治すことを確定させた。
まあ、元々治す予定ではいたが、あまりに酷い性格の場合は治すことを考え直すことも視野にいれていた。
まあ、今ではそうならずにすんでほっとした。
冒険者ギルド本部に向かう日まで後4日。ここからは1日事にセツナの欠損部位を一つずつ治していく。
魔力の心配もそうだが、やはりセツナの体の負担も考えてである。
ただ、移動日まではこの事実を隠したいのでセツナには宿屋にこもってもらう。
その旨を伝えると半信半疑で了承してくれた。ちなみに引きこもりは慣れてるって言われた時は確かにと思ってしまった。
一日目、片足を治す。
セツナはすげぇーと言いながら目を輝かせていた。
二日目、片手を治した。
夢ではないかと自身の頬を叩きながら俺を祈りだした。
三日目、角を治した。
セツナはとうとう俺を神のように崇め始めた。
そして気付けばミロード様と呼ばれていた。
ここでセツナから質問された。
「な、何故ミロード様は治せると分かっていたのに奴隷契約をあの条件にしたのだ?俺が逃げる可能性も十分あるだろうに?」
俺は当然のように言ってやった。
「裏切られた奴が、今度は逆に裏切るのならしょうがないさ。俺に見る目がなかったってことだ」
この一件いらいセツナの雰囲気が変わったような気がした。
まあ、何はともあれ無事にセツナの欠損部位は治せたので、予定通り翌日にギルド本部に向かう。
もちろん、セツナを治しながら同時進行でお世話になった人達に挨拶をしてまわった。
まあそんなに多くはないが、事情が事情なだけに励まされながら送り出してくれた。
ただしエターナ嬢だけは泣きじゃくっていた。
私も一緒に行くーと本気で言ってくれた時は嬉しかったな。
今度会う時は一緒にお酒を飲もうと約束した。
こうして現在はギルド本部に向かう馬車の中なのだが…予定外なことが一つだけある。
「どうしてサラサさんが一緒の馬車に乗っているの」
「あら、言ってなかったかしら?期待の冒険者には専属の受付嬢がつくのだけれども私が志願した結果OKがでちゃった。テヘッ」
「テヘッ、じゃないよ。そんな簡単に故郷をでてもいいの?」
「旦那様に着いていくのが嫁の務めでしょ?」
「おー、ミロード様の奥様だったか、挨拶が遅れて申し訳ないセツナと申す」
「セツナ殿、もちろん存じてございます。以前はこの国を救っていただき有り難うございます。それと体が完治したことも嬉しゅうございます」
サラサの言葉にセツナは厳しい表情になる。
「なぜ、その事実を知って平然としている?」
「旦那様のことで驚いていては嫁は務まりませんから」
「ねぇ、イザーム様も気付いているの?」
「忍びの者から今頃聞いてビックリしているとは思いますよ」
「そっか、何かあったら頼りにしてるよセツナ」
「この命に賭けても。ただ、イザーム殿だけは最後まで私に良くしていただいたので大丈夫だと信じたい」
「父上は大丈夫だと思いますよ。本当に困った時は人として頼みにくることはあっても無理強いする父上ではないので」
「まあ、ならいいけど。セツナの件もそうだけど俺もお世話になったから、本当に困ったことがあれば一度だけ相談に乗ると伝えておいてくれ」
「そんなこと言っていいの?」
「名目は相談だからね、まあ悪事以外なら期待に沿えるように頑張るけどね。それより本当に専属の受付嬢になったの?」
サラサは頷きこう言った。
「受付嬢次第で冒険者の依頼内容が全然違ってくるわ。本気で貴方の役に立ちたいの」
「本音は?」
「将来玉の輿。目が好み。でも、一番の本音は一緒に隣りで奇跡を見てみたいの」
「奇跡と言う言葉を知っているか?そんな簡単に奇跡は起きないから奇跡なんだぜ。それに俺は俺の好きなように生きると決めている」
「もちろんそれを踏まえて隣りにいるわ。そ・れ・に・この体で虜にして見せるわ」
そう言いながら胸元をチラチラと見せてくるサラサ。
うん、ダメだ、本当に虜にされそうで怖いよー。
セツナに女性のいろはを教えて貰おうと心に決めたのである。
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