第22話 奴隷商

奴隷商の元へやってきた俺はイザーム様の紹介状を渡した。


亭主のワン自ら対応してくれる運びとなった。


「ミロード様、どのような奴隷をお探しですか?」


「ここは戦闘奴隷や珍しいスキルをもった奴隷が多いと聞いたので、そういった者を見せて欲しい」


「畏まりました。強者や珍しいスキルを持つ奴隷の人種や状態の要望はありますか?」


「特にはない。足や手がない者でも構わないので全員見せて欲しい」


亭主は驚いたような顔をしていた。

「畏まりました。では、損傷がある者や訳ありな奴隷は牢から出すのが大変ですので、その場所まで見ることになりますが宜しいでしょうか?」


「もちろんだ」



俺はやっと貴族の対応ではなく、冒険者としての言葉で喋っている。


やっと、これからは気兼ねなしに喋れると思うと嬉しくなる。



始めにワンは直ぐにでも戦力になりそうな奴隷を連れてきてくれた。


もちろん俺はスキル鑑定しかないのでスキルしか判らないのだが、戦争奴隷や借金苦で奴隷になった冒険者がほとんどだそうだ。


確かに皆、ガタイが良くいかつい顔をしている。


もちろん多くのスキルを持つ者が多くそれなりの強者だとは思う。


ただ俺の求めている者はいなさそうだ。


どのくらいの価格か尋ねながら、相場の値段を把握し次は本命の欠損奴隷を見せてもらう。


ちなみに雷魔法が使える者は10億以上の金額で手がでなかった。


そういう奴隷はやはり貴族などがこぞって買うのだろう。


そんなことを考えていたら地下の牢の前に来ていた。



そこからは一人一人詳しく紹介して貰った。


腕の無い者、目が見えない者、獣人族やドワーフ族など多種多様で驚いた。


その中で気になった者が二人いたので悩んでいるとワンが尋ねてきた。


「欠損奴隷などを見ても一切顔色が変わらないのですね?」


「奴隷は奴隷だろう?人であることには変わりない。その者の過程になにがあったか知らないが、同情や哀れみを抱くよりも一緒の仲間となる者を探しているのでこちらも真剣でな」


「そうですか、イザーム様の言う通りでした。その言葉をお聞きしましたので特別な欠損奴隷をもう一人紹介させていただいても宜しいでしょうか?」


イザーム様は俺のスキルを疑っている?それとも…。


俺が眉間に皺を寄せて考えているとワンが説明しだした。


「このお方は鬼人族の男性で欠損奴隷になります。片足と片腕がなく、さらには鬼人族特有の角が切られております」


「何故その者が特別な奴隷なのだ?」


「簡単に説明しますと、約10年前ほどにスタンピードと言われる魔物の大規模な集団がこの国を襲った時に体を張ってスタンピードを食い止めてくれたのです」


「それは凄いな、その戦いで欠損したのか?」


「はい。そのスタンピードは魔族が企てていたのですが、最後にその魔族と戦闘になったのですが、あまりに強大な相手に彼であっても敵わないほどで一か八かの捨て身の攻撃で運よく勝てたのです。その代償は大きく、片手と片足を切られ、最後に角を切られる間際に魔族の芯の臓を抉ることに成功したのです。」


「そうか。そんな英雄とも言えるこの国の恩人が何故奴隷に?」


「数年は褒賞と国の保護として余生を過ごしていたのですが、王が替わった際に保護対象が無くなり、その後は褒賞で過ごしていたのですが人に裏切られて生活することも出来ずに奴隷になったのですが、貴族のシガラミもありバレないようにイザーム様が私に頼んで特別な奴隷としてこの地に連れてこられたのです。なので、イザーム様の紹介状がある方のみ面会と購入が出来るシステムになっております」


「なるほど、それは俺に買い取って欲しいと?」


「いえいえ、奴隷に酷い扱いをしない人にご紹介しているだけでございます」


「その基準は?」


「イザーム様のスキルと私の長年の勘ですかな」


「そうですか、ではご紹介をお願いします」


こうして俺は隠し扉の先にいる鬼人族と対面するのであった。



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