第19話 戦場
一週間後。
コーズ殿と一緒に俺はアナザー辺境伯に向かっていた。
何でも、一度辺境伯の地で休んでから戦場に向かうらしい。
そもそも戦争と言っても魔法の打ち合い程度の威嚇だけで終わるだろうと予想しているそうだ。
その後なんだかんだと折り合いを済ませることが多いそうだが、例外で突出した武力、戦力がある場合は本気でくることもあるそうだ。
なので念のため戦場では本陣の後方でコーズ殿は控えるらしい。
何故か俺も一緒にいて欲しいと頼まれた。
アナザー辺境伯では大層な御もてなしをされたのだが、戦争時期にこんなに豪勢な宴を開いててよいのか心配になる。
戦争で命を賭ける可能性もあるので、英気を養うためとは言え恐縮してしまう。
しかし、翌日には皆戦士の顔付きになり戦場へと向かっていった。
戦場の状況は以前睨み合いを行っているそうだ。
どちらかが、上空にデモンストレーションの最大級の魔法を放つことで優越を計るそうだ。
なので、先行は駆け引きがしづらいため、両者共に様子を見ているそうだ。
もちろん魔法部隊以外の剣士など一騎当千の者がいれば状況も変わるので如何に優位に立ちまわるかが勝敗の鍵となる。
戦場に到着した日は何事もなく終わった。
翌日、ピリついた空気が辺り一面を支配している。
そんな威圧感を打ち破るように相手陣営から太鼓の音が鳴り始めた。
その後、上空に特大の魔法が放たれた。
上空に放たれたのは水の龍が空を駆け上がる姿だった。
その魔法に誰もが驚きを隠せない表情をしている。
優に10mはあろう龍が駆け上がる光景は圧巻の一言である。
こちらが優位に立つには、向こうに勝る魔法を放つか、先程の大きさを越える
龍を再現するかであると教えてもらった。
ただ、こちらの陣営は動く素振りがない。
相手が放った魔法から一日以内に魔法を放つのが礼儀だそうだ。
そんな矢先、辺境伯の魔法師団長がコーズ殿の元にやって来た。
「クインズ殿がこちらに来られたと言うことは?」
「お恥ずかしながら、現在の私の魔力では大きさ的に若干負けていると言わざるをえません。コーズ殿の部隊にそれ以上の魔法師はいないか尋ねに来ました」
「残念ながらあれほどの魔法師は…。」
「そうですか、何か奇策や変わった魔法が使える者はいないでしょうか?」
コーズ殿は「うーん」と唸りながらパッと目を見開いたと思ったら何故かこちらを見ている。
「ミロード君、何か奇策や変わった魔法はないか?」
「私ですか?」
「私のスキルがミロード君に反応しているんだよ」
そう言えばアクア嬢から身内のスキルには気をつけろと言っていたな。
そのスキルが反応したと言うことは、何かしろの可能性があるのか…。
目をつぶり精神を研ぎ澄まし考える。
そして、ふと気が付いた…もしかして。
「試したことはないのですが、もしかしたら綺麗であっと驚く魔法なら出来るかもしれません。ただ、先程の魔法より優れているのかは判りません」
その言葉を聞いてクインズ殿は目を輝かせる。
「元より状況が悪いので、負けていても構わないからお願いできないか?」
俺は考える素振りをする。
「条件が一つだけあります。」
「なんですかな?」
「魔力量を増やせる物や魔法消費量を抑える装備などはないですか?」
「どちらの方がいい?」
俺は魔力増幅の指輪を持っているのですぐに答えた。
「出来れば魔法消費量を抑える装備があれば嬉しいです。」
「承知した。もし向こうの魔法に匹敵する魔法であった場合は、魔法消費25%カットのネックレスを授けよう」
これを聞いたコーズ殿が驚いている。
「もしや、秘宝水龍のネックレスですか?」
クインズ殿は頷いた。
「藁にも縋る思いじゃ。どの道デモンストレーションで負ければ向こうは躊躇なく攻めてくるだろうしな」
「どう言うことですか?例年ならありえないでしょう?」
「掴んだ情報によれば、帝国は戦争で武力を示して領地を拡大したいそうだ」
「もしや、新皇帝になった息子ですか?」
「ええ、今回の件も難癖をつけてこちらのせいにして戦争を…」
二人の話を聞いて、なんとなく今の状況が解ってきた。
向こうが原因だとわかったならば遠慮はいらないな。
俺は悪い笑みを浮かべていることだろう。
こうして、俺の一世一代のデモンストレーションが始まる。
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