第17話 閑話 ペルル
私は産まれてこのかた名前が無い。
今はペンシルと言う魔物に産まれ今は群れの中にいるの。
ただ、私一人だけ色が違って仲間はずれにされているの。
そのせいで誰も名前をつけてくれなかった?
同じ仲間の近くに行っても飛び蹴りをされて輪の外に弾かれるの、ヒドイよね。
そんな日々が続いたある日、私の名前も居場所もなく、一人で辛うじて餌を探して食べているといつの間にかみんながいなくなっていたの。
泳いで、歩いて、沢山探したけれど見つからなかった。
元々一人で居るような感覚だったから別にいいけど…。
いいけど…。
ううん、違うの。本当は私も誰かと一緒に遊びたいの。
ただ一緒に居てくれるだけでいいや。
邪見にしないで、一緒にご飯を食べて一緒に寝てくれるだけで嬉しいのにな。
数年後。
このままずっと一人のまま死んでいくのかなぁ?
そんなことを考えていたら涙がでてきた。
何で私だけ橙色なんだろう?
何で私だけ変な魔法が使えるんだろう?
狩りをするのに便利だからいいけど。
おかげで食いしん坊になったじゃない。
あ、話が脱線したけど誰かと一緒にいたいな~。
それ以上のことは望まないのに…。
「ねぇ、誰かー。」
「一緒に遊ぼう」
「ねぇ、誰かー。」
「一緒にお魚食べよう」
「だれかぁーーー」
「だれかぁーーー」
「おねがいぃ~~~~~~~~」
私の心からの叫び声が響き渡った時、目の前の空間から淡い光がともしだした。
何がどうなっているか分からないけど、私はその光の中へ飛び込んだ。
気付けば目の前には人族が一人いた。
昔誰かが云っていた人族との契約とはこのことだったのね。
目の前の人とパスが繋がっているのがわかる。
何故だが温かい気持ちが伝わってくるのは何故?
この人も私をイジメるのかな?
だんだん近づいてきて人族の手が伸びてきたの、私は怖くて身構えるしか出来なかったのだけれど…。
「き、きもちぃー」
私はただただ撫でられただけだった。
そして優しい言葉で彼はこう言ってくれた。
「俺と一緒に冒険しないか?」
私はすぐに頷いて彼に引っ付いた。
それからと言うもの、四六時中一緒にいたの。
たまに一人で何処かに行こうとするから口ばしでつついてあげたわ。
イタイ、イタイと言いながら笑ってくれる主がいつの間にか好きになっていた。
優しく撫でてくれる主の手が大好きだ。
そんな主が魔物を討伐するのも一緒なの。だって、主が死んだら嫌だもん。
かけがえのない人にやっと出会えたから、主のためならこの命も差し出す覚悟なのに…。
それなのに、未だに主は魔物を倒してこいとは言わないの。
一緒に冒険しないか?って言ってくれたのに何故なんだろう?
でも私が特殊な魔法を使っていたら驚いてたの。
えっ、何の魔法って?
それはねぇ~、泳げる魔法を使えるの。
下は氷で凍らせて上は水魔法で水を張ってその上を泳ぐんだよ。凄いでしょ。
他にも魔法は使えるけど、今は主を見てるの。
何故?
それは、主が私をかばって戦ってくれるのが嬉しいの。
その姿がかっこよくて気付いたら戦闘が終わってるの。テヘッ!
そんな私も最近は甘い物に目がないの。
主の知り合いが何故か私にお菓子と言う物をくれるの。
それが美味しくて、幸せな気分になっちゃうの。
でもね、主にもそんな気持ちになってほしくていつも半分こするの。
ただ、主に寄ってくる女と呼ばれる人達がくると何故かヤキモキするの。
何故だろう?でも、本当に主に出逢えてよかったなぁー。
一緒に寝て、起きて冒険して食事をするこの生活がずっと続きますように。
いつか主が死ぬまで隣りにいれたらいいな。
でも主は冒険者は危険だからいつ死ぬかわからないって言ってた。
ううん、そんな感覚が伝わってきたことがあるの。
言ってる言葉は解らないけどパスが繋がっているせいか何となく伝わるの。
だから主が危なくなっても私が助けれるように今はこっそり魔力を練って力をつけるの。
このままずっとこの幸せな日常が続きますように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます