第16話 仲間
それから一ヶ月後。
俺は冒険者ギルドにて居づらさを感じていた。
毎回アーニャさんの列にいつも並んでいるのだが、その度にサラサさんに絡まれている。
それを見た他の冒険者が白い目で俺を見ているからだ。
アクア嬢のお抱えの冒険者として何故か伝わっているので、今は放置されているがいつか危ない目にあいそうだ。
そんな日々を過ごしているとどうしても気配察知のスキルか気配に敏感な相棒が欲しい。
そう、やはり異世界と言えば可愛いモフモフではないだろうか。
1人の時間も大好きな俺にとって、やはり傍で引っ付いていてくれるだけの心が温まる相棒が欲しい。
そう思ってからは冒険者ギルドの2階の資料室でテイムや召喚、さらには精霊の存在などを調べたがそんな簡単にはいかなさそうだ。
もちろんスキルがあれば別だが、俺にはスキルが…。
あ、残り2つのスキルを駆使すればもしかしたら。
ただ、貴重なスキルは虹の指輪に反映してくれないので…簡易スキルの効果で仲間になってくれそうなスキルを考える。
そして気付いた。
テイムや精霊スキルは無理がある。なら、召喚しかない。
それも魔物を限定した召喚ならいけるかも?
こうして俺は片っ端から魔物図鑑を漁って調べた。
その中にペンギンに似た魔物でペンシルと言う魔物がいた。
もちろん始めにカーバンクルやドラゴンの子供などを試したが反応してくれなかった。
やはり龍種や聖獣といった生物が簡易スキルで呼び出せるわけがなかった。
それにしても良くパーフェクトヒールを覚えられたものだ。
日本の知識があったからなのか、そこだけは不思議でしょうがない。
その結果、無事に召喚できたのが先程紹介した魔物ペンシルである。
召喚した魔物の色は橙色で、ペンギンと同じようにお腹周りの色が白色である。
虹色の指輪の橙色と同じ色もあって成功したのだろう。
ペタペタとこちらに歩いてくるのが可愛い。
そして俺の前に来るなりつつかれた。
「イ、イタイ、イタイ」
「クルゥ、クルゥー」
「え、なになに、魚を食わせろ?」
クルゥ、クルゥと鳴いているだけなのだが、何故だが理解できた。
「今は魚を持ってないぞ」
その言葉を聞いた瞬間、さらにつつかれた。
今度魚を食わせてやると約束して、今は魔物の肉で我慢してもらった。
うん、可愛いのだけれども何か違うよう…あ、モフモフじゃない。
その言葉を聞いた瞬間にペンシルに飛び蹴りをされた今日この頃です。
ちなみにメスであることからペルルと名付けた。
無事に召喚できたのだが、ペルルは食い意地がはっている。
ご飯を与えないとすぐにつついてくる。
さらには俺が出掛ける時は絶対についてくるのだ。
魔物討伐で危ないから宿屋に置いていこうとしたら飛び蹴りされた。
うん、隣りをペチペチと歩く姿は可愛く触り心地もいいのだが戦闘能力が不安である。
しょうがなく慣れたゴブリン討伐をしながら様子を見ていたのだが、ペルルは空中に水の道を作りその上を軽やかに滑っていた。
うん、ゴブリンなどのスピードであれば問題なく逃げることができるだろう。
万が一の場合は召喚ですぐに近くに呼ぶことが出来るので、強い魔物以外なら何とかなりそうだ。
最近は隣りにペルルがいることが当たり前となっている。
一緒に水浴びをして、一緒に食事を食べて、一緒に寝ているのだが、トイレに行くのでさえ一緒についてくるペルル。
とっても可愛いのだけど、俺の一人の時間は無くなった。
まあ、側にいれば俺が何をしてても大人しいのであまり気にしないことにしている。
暇な時間に触り心地を楽しんだり、暇な時に相手をするのだけれども…、これって理想の相棒じゃねぇ?と最近気づいたのである。
ただ、困った事にアクア嬢などの綺麗な女性と初めて会うと何故か威嚇をするのである。
今ではアクア嬢達に餌付けをされ仲良くしてくれているが、初対面の女性の対応だけは何とかしたい。
ペルルがいることでやはり傍に誰かが居てくれるだけで心が温かくなるなと実感させられた。
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