第12話 閑話 エターナ嬢
私の名前はミリオン・エターナ。
子爵家の次女で15歳よ。
今日は大好きなアクアお姉さまのところへ遊びに行くの。
あ、お姉さまと言っても同じ歳なんだけどね。私よりも高貴で誰にでも優しいお姉さまは私の憧れなの。
どんくさい私とは大違い。
こんな私を娶ってくれる殿方はいるのかしら?なんて考えたこともあるけど、顔とスタイルは良いらしく縁談の話は沢山きているの。
15歳なのにまだ婚約者も決まっていないので、親がしびれを切らせて縁談を沢山持ってきた。
そんな縁談の内容を暇な馬車の中で見ていると外が騒がしくなってきた。
緊迫した声で護衛の者が馬車から出ないようにと言われた。
メイドが窓から確認すると盗賊らしき者が護衛と争っているとのこと。
「エターナ様、状況がかなり悪いそうなので護衛一人と一緒に逃げることになりました。申し訳ございませんが一緒に走っていただけますか?」
「わ、わかったわ」
こうして馬車の物陰から街に向けて走った。
走って、走って、無我夢中で街を目指したのだけれども…、ついに盗賊達が追い付いてきた。
追い付いてきたと言うことは護衛の者達は全滅したのでしょう。
メイドと最後の護衛隊長が時間を稼ぐと言い、ついに私は一人で逃げることになった。
その先盗賊が投げたナイフが指先に当たり指が切断した。
痛くて痛くて泣き叫びたいのに逃げろと心が訴えかけてくる。
ハンカチで指を止血して痛みを堪えながら幾度となく走った。
私ってこんなに走れたのね。
そんな余裕が出来たのは街が見えたころだった。
何故かその後は盗賊に襲われることはなかった。
護衛隊長とメイドが無事でありますように。
街の門番に事情を説明してアクアお姉さまの元に案内してもらった。
お姉さまを見た瞬間、私は糸が切れたように眠りについた。
翌日、起きて聞いたことは皆死んだってことと私の指は余程の奇跡が起きないと完全には治らないと言うこと。
その事実を聞いたとき、私は足から崩れ落ちた。
まだ婚約する相手も決まっていないのに…。
これでは貴族のパーティに参加することも出来ないわ。貴族としての価値がないとしたら…。
残るは愛人か体目的の相手しかいないわよね。
まだ15歳なのに、私の人生最悪だわ。
私のスキルの幸運ってなんだったの?
確かに今までは運が良かったことをあげればキリがないけど…、その結末がこんなのって酷すぎるわ。
それに私のために皆死んだなんて…。
その後私は一人で泣き続けた。
私が何をしたって言うのよ、私が幸せだった分、他の人のために頑張ったり、孤児院に寄付をしたりしてたのに…。
泣き疲れて無心になったら頭が急に空っぽになった。
今更何を言ってもお終いね。
この指では私生活にも影響がでるわね…。
せめて貴族として価値の無くなった私でも出来ることを考えよう…。
気付けば今後のことを考えるようになっていた。
スキル持ちやエリクサーなどの秘薬のことも聞いていたけども探す方が大変だとか…。
なので私は指がない状態でもやっていけないか必死に考える。
そんな矢先アクアお姉さまが一人の青年を連れてきた。
流石の私でもキレそうになったわ。
でも、話が進んで行くと………。
………。
貴方は何をするおつもり?
この指が治るなら秘密でも何でも守るわ。
………。
………。
えっ、今、何て言った?
………。
………。
えっ?
………。
………。
う、嘘でしょう?
ゆ、指が治ってる。
気付けば私はその青年に抱き着いていたわ。
レディーとしてあるまじき行為でしたが、それでも体が勝手に動いたのですからしょうがないですわ。
それにしても殿方の体って落ち着きますわね。
しばらくこうしててもいいよね?
その後、彼はアクアお姉さまを呼びに行ったんだけど、良く見たら彼は私好みの顔でドキドキしたのを今でも覚えているわ。
お姉さまと喜びながら、何故か彼のことを根掘り葉掘り聞きだした。
今は駆け出しの冒険者らしいのだけど、アクアお姉さまの直感が何かを持ってるって感じたらしい。
今までのお姉さまのスキル≪直感≫は些細なことから凄いことまで完璧に何かを当てているから、彼も何かあるに違いない。
何もなくても、私の人生の恩人だし尽くしてもいいよね?
そんな未来のことを妄想しながら幸せな気分で…おやすみなさい。
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