第11話 エターナ嬢

アクア嬢は部屋へ入るとエターナ嬢に優しく話かけた。


「もう起きていたのね。大丈夫?」


エターナ嬢の目に覇気はなく、死んだ魚のような目をしていた。


「アクア様、しばらく一人にしておいて下さい。それに今殿方を連れてくるなんて、どう言うおつもりですか?」


その言葉を聞き、俺は話に入る。


「アクア嬢、彼女と二人きりで話をさせていただきませんか?」


「エターナに何かあったら許さないわよ」


そう言うと執事をつれてアクア嬢はでていった。



出ていったとたん、エターナ嬢が話かけてきた。


「何のようかしら。私の姿を見て楽しむおつもり?


それとも、もうお嫁に行けなくなった私をからかいに来たのかしら?


それともこんな傷者になった私の体がお目当て?」


「この状況でも冷静なのですね?」


「冷静じゃないわよ、気が狂いそうなほど暴れたいわよ」


さらにエターナ嬢は涙を流しながら叫んだ。


「私の頭の中で嫌な言葉がよぎるの。アクア様は何も悪くないのに、悪いのは全部裏で計画した誰か…なのに、誰かに当たりたいほどに汚い言葉が脳を掠めるの」


「私でよければ怒りのはけ口になりますよ」


そこからはエターナ嬢は泣き叫んだ。


「何で私なのよ、


私が何をしたと言うのよ」


泣き叫ぶ声には、何故か誰の悪口もでてこなかった。



アクア嬢が認めるだけあって、心の優しい人なんだろうな。


今の魔力では心もとないけど指だけならなんとかなるかもしれない。


念のためいただいていた高級な魔力回復薬を使う用意もしている。


彼女の泣き叫ぶ声を聞き終わった俺はエターナ嬢に声をかけた。


「貴方は秘密を守れますか?」


「急になによ?それよりも貴方は誰よ?」


「ただのしがない冒険者です。貴方様のお力になれるかもと思い無理に来させていただいた次第です。それで貴方は秘密を守れるお方ですか?」


「この状況が変わるなら、秘密でも何でも守るわ。だから、お願い、私を助けて」


彼女の涙が雫となり床に滴る姿を見て俺は純粋に彼女を助けたいと思った。


「では今から見たことは全て秘密ですよ。口裏も合わせて下さいね」


エターナ嬢は静かに頷いた。


「まずはすこしでも体力を回復するためにそこにある食事を食べて下さい」


彼女が食事を食べ終わるのを見届けて俺は緑の不死鳥を出現させた。


「まずは、気力・体力をさせますね」


そう言い終わると俺は不死鳥を彼女に放った。


淡い光に包まれた彼女の手をそっと手の平に乗せて言い放った。


「パーフェクトヒール」


無くなった指の形状や血管など、正常なイメージを意識いて唱えた瞬間、魔力が一気に持っていかれるのを確認すると同時に魔力回復薬を飲む。


すんでの所で意識を保つことが出来た。


そして、彼女の手を見て成功したことにほっとする。


エターナ嬢は驚愕しながらも涙を流している。


「さて、口裏を合わせますよ。先祖代々伝わる秘宝を使ったことにしておいて下さい。あ、もし盗賊に切られた傷があるのならば後日治しますよ。将来の旦那様に見せられる綺麗な体にするので遠慮なく言って下さいね。ただ、その時は私に傷を見せることになるのでご了承下さいね」


俺は優しくウインクすると、その瞬間彼女に抱き着かれた。


「あ、有り難う。本当に有り難う」


「この状況で誰のせいにもせず、頑張った心優しい貴方だから私は助けただけです。今までの自分を褒めて上げて下さい」


優しく抱き留めながら彼女のケアをする。


こうして彼女が落ち着いて口裏をしっかりと合わせた所でアクア嬢達を呼んだ。



アクア嬢はエターナ嬢を見てワナワナと震えている。


「ど、どう言うことなの?エターナ、大丈夫なの?」


「ええ、お姉さま大丈夫ですわ。彼が代々伝わるたった一つの秘宝を使って下さいました。彼も本当に効くのか半信半疑のようで賭けだった見たいですが、でもそのおかげでこの通りです」


エターナ嬢は手をヒラヒラと動かせて見せた。


その姿を見たアクア嬢はエターナ嬢を抱きしめた。


この光景を見た俺は執事と目配せをして席をはずしたのであった。




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