第8話 準備
村に帰ってからは古びた剣と魔獣の鱗でできた楯を頂いた。さらには追加報酬として冒険者登録費用もいただき無事に冒険者登録をすることができた。
水の都サンターナの冒険者ギルドで登録するか迷ったのだが、この村で見習いのランクをクリアするほうが後々役に立つと考えたからだ。
今は常時クエストとして貼られている薬草採取とスライムやホーンラビットの討伐に向かっている。
執事報酬でいただいた剣を振りかぶってははじかれること数回。
スライムと目が合うと鼻で笑われた気がした。
その結果、沸々と怒りの感情が沸き起こった。
「このやろー」
ムキになって、おもいっきり剣を突き刺した。
スライムの核に当たり、何とか倒せた。
スライムを数匹倒したところで、すこし体が軽くなった気がした。
もしかしたらこれがレベルアップなのかもしれない。
そこからはすこしだけスライムを倒しやすくなっていた。
スライム討伐と進行して薬草採取を行うことで、冒険者ランクがGランクからFランクに昇格したのだ。
ちなみにここだけの話だが、ホーンラビットには角で軽くあしらわれたので逃げて帰ったのである。
こうして冒険者として過ごす内にレベルもすこしだけ上がった気がした。
学園に関してもバーバラ嬢と仲良くしている内にイジメられることは無くなった。
最後まで友達は出来なかったけども無事に卒業を迎えることができた。
孤児院のロゼッタや施設の子供、そしてバーバラ嬢に別れの挨拶を済ませて待っていると一台の豪華な馬車がやってきた。
馬車から降りてきたのは、お披露目会でアクア嬢の後ろにいたアクア嬢の従者だった。
従者のミモザはぶっきらぼうに伝えてきた。
「馬を休め終わったら明日の朝に出発するので、それまでに挨拶を終わらせて下さい」
その言葉を伝え終わるとミモザはバーバラ嬢に挨拶を交わし、体を休める場所へと案内されていた。
俺はこのまま向かう気になっていたのだが、考えて見れば馬の休憩もいるし当たり前だな。挨拶の終わった孤児院に気まずくなりながらももう一日泊まるのであった。
翌日、水の都サンターナに出発である。
何事もなく水の都に到着したのだが、馬車の中では終始ミモザの愚痴を聞く羽目になった。
なんでもアクア嬢が俺を褒めるため、ミモザの嫉妬が爆発して俺に愚痴を言ってくるのだ。
俺にどうしろと言うんだー?と心の中で叫ぶ反面、褒められていることは嬉しかった。
こうして半年ぶりの水の都サンターナに到着し、貴族用の検問をくぐり入場した。
ちなみにこの世界は一週間が6日間で、一カ月が5週間、一年間が12ヶ月である。
今回は冒険者ギルド近くの宿を予約してくれているそうで、前回の貴族街と違った街の一面を見ながら進んだ。
宿屋に着くとアクア嬢はなんと一週間分の宿の費用を支払ってくれていたのである。
この時は本当に水の女神様では?と思うほどに祈りを捧げた。
さらには一週間後の最終日にアクア嬢とお茶会をするので空けておく用に伝えられるとミモザはとっとと帰っていった。
俺は空を見上げながら、ついに俺の冒険がついに始まるのかとワクワクしていた。
えっ、スライムを倒しながら冒険してただろう?って、語るほどのできない内容なので一からと言う意味である。
まあ、言葉遊びは置いといて宿に入ると兎の獣人の方が受付をしてくれた。
「アクア様からお伺いしております、2階の奥の角部屋をお使い下さい。また、お食事は朝食のみついていますので、夜ご飯が必要な時は朝食の時にお申し付けください。」
兎の獣人族にもの珍しそうに見ていたら、再度話かけられた。
「獣人族が珍しいですか?」
「あ、スミマセン。俺の街には獣人族がいませんでしたので」
「そうだったのですね。この街は種族関係なく住めるので私達は助かっております」
「いい街なのですか?」
「それはもう。酷い街に行けば差別や攫われて奴隷にされる何てこともあると聞いています」
「そ、そうなんですね。ちなみに獣人族の方の耳や尻尾って触ると失礼に当たりますか?」
「男性の獣人は許しがでれば問題ありませんが、女性の場合は恋人にだけ触らせる種族が多いと思いますよ。まあ、奴隷の場合は別ですが」
「そ、そうなんですね、お答えいただき有り難うございます」
ついつい興味本位で質問してしまったが、聞いておいてよかったと思った。
また、執事の期間が終わり冒険者としてやっていくにあたり、一人称を俺にすることにしている。
こうしてサンターナの街での冒険者生活が始まるのであった。
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