第4話 虹色の指輪

後日、バーバラ嬢にお茶に誘われた俺は男爵家に来ている。


二つの村を統治している男爵家なのだが、貴族の屋敷と言う感じがしない。


中を見渡しながら来客室へと足を運ぶとバーバラ嬢自らの手でお茶を入れてくれた。


「バーバラ嬢自らお茶を入れていただき有り難うございます」


「見ての通り貧乏貴族だからしょうがないのよ。それよりも貴方、そんな丁寧語を喋れたのね?」


「もちろんです。今までは人生を諦めていたのでどうでも良かったので…」


「そ、そう。なら今は生きる希望があるってことよね」


「ええ、もちろんです。一度僕は死のうとしたのですが崖から落ちても死に切れず森の中で色々と考えている内に、うだうだと考えることすらもバカらしくなり死ぬより怖いものはないと思ったのです」


「…、何て言っていいか分からないわ。始めはどんな心境の変化があったのか興味があっただけなのに今の貴方を見ていたら一つお願い事が沸いてきたわ」


「僕にですか?」


「ええ、成人した貴族の子供が各地方ごとに集まるお披露目会があるのだけれども、私が連れていける執事などがいなくて困っていたのよ。丁寧語が喋れるならどうかしら?」


「いきなりどうかしらと言われても…?」


「もちろん何かしろの報酬はだすわ。まあ、多く出せる程の余裕がないことは貴方も分かると思うけれども」


俺は報酬と言う単語に惹かれた。

現在ステータスやレベルはイジメられていることからも最底辺だと考えるとやはり武器などが必要だ。


大したことがないとは言っているが、今後の冒険者になる準備や登録費用を考えてもすこしでもあると助かるのだ。


「そこまで言うのでしたらお受け致しますが、三つだけ条件があります」


「三つも?多いわね、取り敢えず聞くわ」


「一つ目は従者や執事としての服を用意していただくこと。


二つ目は執事などが行う貴族に対する礼儀の本を見せていただくこと。


最後に報酬は余っている装備品もしくわ金銭をいただけると有り難いです」


バーバラは内容を聞いて目を見開いた。


「そ、そんなことでいいなら。それよりも貴方の考えにビックリしてるわ」


そう言い終えると何故かバーバラは浮かない顔をしている。


「どうかなさいましたか?」


「見ての通り、私は貴族御用達の学院にも通っていない貧乏貴族なの、御披露目会では雑な扱いをされるかもしれないわ。そんな姿を見せることが恥ずかしく思えて」


「貴族の流儀は分かりませんが、バカにしたいやつはバカにさせたらいいですよ。僕なんて未だにイジメられていますからね」


にこやかに自虐する俺にバーバラは呆れている。


「はぁー、なんか貴方と話していたらすこしは気が楽になったわ」


「それは良かったです」


こうして一ヶ月後のお披露目会に執事としてついて行くこととなり準備をすることになった。


もちろん執事の心得と言う本を借りて読みこんだ。


なになに?


成人した男性の場合一人称は私と名乗るのが一般的である。

語尾や口調など………、こと細かに書かれている内容を頭に入れながらお披露目会に備えた。


また、紅茶の入れ方などの実技も行わせてもらい最低限ではあるが、何とか形になったと言えるが、本職の人から見れば笑われても仕方がない。


さらにはユニークスキル虹の指輪の能力を使って必需品を用意していく。


・虹の指輪

七色+虹の特徴に合わせて能力を付与することが出来る。能力に関しては通常のスキルよりも劣る。


そう、虹の指輪を時空にて選んだ際に能力内容が頭の中に伝わってきたのだ。


転生までの5分間の間で3つの能力を瞬時に頭の中で思い描いた結果、スキル能力として反映されたことで残りの能力はゆっくりと選ぶことが出来ることとなった。


まず選んだ能力がこちら。


虹色→フェニックス(不死鳥)

藍色→運上昇

紫色→スキル鑑定


自身がイメージ出来れば反映されると思われる。

俺の中でオーラ鑑定の中で昔の自分が紫色であったため、紫色をスキル鑑定に選んだ結果、無事に手に入れることが出来たのである。


さらに藍色はラピスラズリを思い描いた結果、運上昇を無事に手に入れることができた。


ここからはフェニックスの実験を踏まえてゆっくりと決めて行く予定だ。


現在は新たに黄色のスキルを付与した。

・黄色→アイテムボックス

(マジシャンの黄色いボックスをイメージしたらスキルに判定)


ちなみに青色を氷魔法で初めは試したのだが反映されず、何かしろの基準があるみたいだ。まあ、説明文にも通常のスキルより劣るとあっただけにレアなスキルは難しいのかもしれない。鑑定ではなくスキル鑑定のように限定すると付与されやすいのかもしれない。


こうしてアイテムボックスを手にいれたことでいろいろと必要そうな物を詰め込みながら準備を行った。







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