第22話 休日
カルタナまで戻りギルドで報告をおこなう。
なんとギルドランクがBランクをとばし一気にAランクまで昇格した。
これは他に例をみない速度の昇格だと受付のお姉さんが言っていた。
報酬もきちんと金貨100枚入り、お金の心配は当面ないだろう。
「いいの? 私何も貢献していないけれど」
「ああ、今日は休みにするから。好きなことに使ってほしい」
そこでレイに報酬の一部を渡し、今日は休みとする。
今まで休む日などなく生活のためにクエストをこなしていたのだ。
こういう日もないと駄目だろう。
レイとは別行動とし、俺も都市を見て回ることにする。
カルタナのギルドや聖堂などはやや特徴的な外観をしているが都市の街並みは統一感がある。
3~4階建てのコンクリート造りの赤い屋根の家が並び、店には看板が掲げられている。
俺はまずは折れた短剣の代わりを手に入れるために装備屋に入る。
なかには様々な職業に対応した装備が所狭しと並べられている。
「いらっしゃい。おぉ、ロビンさんじゃないか。聞いたぜ、バジリスク討伐したんだってな」
レジから装備屋のガタイのしっかりしたおっちゃんが入るやいなや声をかけてくる。
もうバジリスク討伐の話が回っているんだな。
俺は肯定し、バジリスクについておっちゃんの質問に答える。
一段落したところで本題の短剣購入の話をする。
「それならいいのがあるぜ」
そう言うとおっちゃんはレジの奥に入っていき、一本の短剣を俺に見せてきた。
黒い柄の片刃の短剣。
しかしその刃の部分が特徴的だ。
黒い木目の特徴的な模様が銀に輝く刃に描かれており厨二心をくすぐる。
この短剣はダマスカスというものらしく鉄よりも硬く、切れ味も数段上の品物らしい。
俺はそれを見て即購入を決める。
性能が良いのももちろんあるが、やはりデザインのかっこよさが決め手だ。
「ありがとう。英雄さんに売るんだ、安くしておいてやるよ」
「ありがとうございます」
おっちゃんは安くすると言っていたがそれでも金貨10枚で他の武器よりも明らかに高い。
俺が前に買った短剣が銀貨5枚と考えると痛い出費だが、これは必要経費であろう。
購入した短剣を早速腰に装備し、装備屋を後にする。
「おお、ロビン! ロビンじゃないか!」
外に出ると右から声が聞こえた。
振り向くとカルタナ兵の鎧姿をした男と胸に十字架のアクセサリーをつけた神官の姿をした女がいた。
それは俺がよく知る2人。
学校の同級生だった親友のロランとエルシーだ。
「ロランにエルシーか、久しぶりだな」
「ロビーン!」
「おわっ」
挨拶をするとエルシーがいきなり飛びついてきた。
こいつも変わらないな。
学生の時からよくこうやって抱き着かれていた。
最初は照れたりもしたが、もう慣れてしまった。
小柄で猫のようなこの同級生がこうしてくるときは決まってやることがある。
いつもの通りその青い短髪の頭を撫でてやると俺の胸に顔をすり寄せてくる。
「ロランは軍に入隊したんだね」
「ああ、まだ当然下っ端だけどな」
そう笑顔で言う彼。
父も軍の幹部で貴族である彼、憧れの父を追っているのだろう。
「私は神官だよー!」
そういって俺から離れて姿を回って見せてくるエルシー。
清楚なその格好は彼女には少し似合わない気もするが、それはきっと普段の彼女を知っているからだろう。
「そういや、ロビンはあのバジリスクを討伐したんだってな」
「よく知っているね」
「そりゃもう。都市でもすごい話題だぞ」
そんなに出回っているのか、人の話が回るのは早いとはよく言うが本当にそうなんだな。
「なんか綺麗な女の子と一緒なんだって?」
「ああ、レイって子と一緒に今は冒険者をしているんだ」
「むぅ~~!」
「すまんすまん。エルシーの前じゃこの話は駄目だな」
レイの話題を出すと何故かエルシーが頬を膨らませ不満顔をする。
「どうして駄目なんだ?」
ロランの言った意味がよく分からず聞き返すと彼は大きく溜息をついてくる。
「やれやれ、お前はそういう奴だったよな」
なんか馬鹿にされている気がするが……。
「私も……」
「え? 何か言った?」
ボソッと何か言う彼女に聞き返すと、顔をバッとあげてまた俺に抱き着いてくる。
「私もロビンと冒険者する!」
エルシーも冒険者なのかな?
回復魔法や守護魔法に特化した神官は冒険者の中でも重宝される職業である。
「はいはい、お前はカルタナ軍の一員だろ」
ロランがエルシーの首根っこを掴んで引き剥がそうとする。
エルシーがパタパタと手を動かして抵抗するが力ではロランには勝てず簡単に離れた。
なんだ、エルシーも軍に入隊したのか。
軍隊は兼業を禁止されている。
少し残念ではあるが、一緒に冒険はできなさそうだな。
「それじゃあ俺たち一応見回り中だから」
「ああ、またな」
「またねー!」
2人とも充実した生活を送っているようで安心した。
やはり友とは良いものだ。
いつかまたみんなで何かしたいと思わせてくれる再会だった。
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