あなたが偽者だったとしても

たとえ、あなたが偽者だったとしても、

あのときの私の想いは本物だった。

私はあのとき、確かに生きていた。

あのときの、あなたのやさしい笑顔を、

あなたのやさしい眼差しを見たときの心の震えは、

どれも本物だった。

私はあなたのことを忘れようとした。

あなたはもう、私の前からいなくなったのだから。

私は、その記憶と感情を、自身から切り離してはいけなかった。

私は、あなたとの思い出を抱えて生きていかなくてはならなかった。

その記憶と感情が、たとえ苦痛に満ちていたとしても。

それらを自らから切り離し、虚無に陥ったほうがラクだったとしても。

私はもう、死んだようには生きたくなかったからだ。

あちら側に半分足を踏み入れ、死霊たちと生きることは御免だった。

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