北斎が波のはな見んなつのうみ

【読み】

ほくさいがなみのはなみんなつのうみ


【季語】

なつのうみ(夏の海)


【語釈】

北斎――=葛飾北斎


葛飾北斎――江戸後期の浮世絵師。葛飾派の祖。本姓、中島。幼名、時太郎、のち鉄蔵。別号、春朗、宗理、可候。江戸の人。勝川春章に師事して役者絵、美人画、絵本、さし絵などを描き、さらに狩野派、土佐派、琳派や、中国風、洋風の画法を修める。人間や自然を厳しく探求し、構成的で力強く、動きのある筆法により、人物画や風景版画に独自の画境を達成。その影響はフランスの印象派にまで及んだ。代表作「北斎漫画」「富嶽三十六景」「千絵の海」など。宝暦10〜嘉永2年(1760-1849)。

[精選版 日本国語大辞典]


波の花――①波の白くあわだつのを白い花に見立てていう語。特に、冬の寒くよく晴れて風の強い日、奥能登外浦海岸・越前海岸など岩石の多い海辺で見られる波の白い泡のかたまりをいう。②塩。食塩。もとは女房詞。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

北斎が絵に描いたなみのはなを見よう。夏の海に来て。


【付記】

北斎が描いた大波の絵(「神奈川沖浪裏」)の季節をすこし調べたが分からなかった。富士が雪を被っているが、それはほぼ一年中見られるものたがらさほど参考にならない気がする。そこで芭蕉(1644-1694)の句のイメージに重ねるべく夏とした。


客観写生を奉じるひとはどう思うか分からないが、越後の海は穏やかなものだと聞く。つまり芭蕉が「荒海や」と言ったのはおそらく虚構である。その事実がその句の価値を減じるかどうかはどれほど議論されたのだろうか。


なお、「波の花」は春の季語である。


余談だが、俳諧における葛飾派の祖は、「目には青葉」の句でしられる素堂(1642-1716)である。


わたしは北斎もくだんの絵も特に好きなわけではない。わたしが好きな画家は、いまのところ一に若冲(1716-1800)、二に御舟(1894-1935)という塩梅である。西洋画はあまり好きでない。


【例歌】

とま舟のとまはねのけて北斎のぢぢが顔出す秋の夕ぐれ 北原白秋


【例句】

島々や千々に砕けて夏の海 芭蕉

熊野路やわけつつ入れば夏の海 曽良そら

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