荒城の月うかがふやむらがらす

【読み】

くわうじやうのつきうかがふやむらがらす


【季語】

月〈秋〉


【語釈】

むらがらす(群烏/群鴉)――群れをなしている烏。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

荒れはてた城をてらす月をうかがうカラスの群れである。


【付記】

鳥の視点に立ってよんだ。そういう句が世にどれほどあるかは知らない。


【例歌】

熟田津にきたづに船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎいでな 額田王ぬかたのとおおきみ

あまの原ふりさけ見れば春日なるみかさの山に出でし月かも 安倍仲麿

月といへば姨捨山をばすてやまの秋の空ながむるやどは更科さらしなの里 寂蓮じゃくれん

天の原ふりさけみれば月きよみ秋の夜いたく更けにけるかな 源実朝


【例句】

月に柄をさしたらばよき団扇うちはかな 宗鑑そうかん

夜ルひそかに虫は月下の栗を穿つ 芭蕉

隠れ家や月と菊とに田三反さんたん 同

一家に遊女もたり萩と月 同

ぢやうあけて月さし入れよ浮御堂うきみだう 同

月澄むや狐こはがるちごの供 同

橙の花もけだかし月の前 路通ろつう

とどの木のずんと立ちたる月夜かな 鬼貫おにつら

辻堂にふくろ立て込む月夜哉 丈草じょうそう

月清し水より立ちて五位の声 野坡やば

背戸門せどかどにひよろひよろと出る月夜かな 支考しこう

つき天心てんしん貧しき町を通りけり 蕪村

大名をとめて蘇鉄の月夜かな 田福でんぷく

月影つきかげや田を遠近をちこちの水の音 召波しょうは

睫毛まつげにも露置く秋や夜半の月 几董きとう

とび魚の飛ぶ夜隈なき月夜かな 同

月高くかりがね低し淡路島 士朗しろう

夜明ても離れかねたり萩と月 同

すずき提て酒屋を叩く月夜かな 内藤鳴雪

酒なくて詩なくて月の静かさよ 夏目漱石

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