東風ふくや筑紫のかたに月かかる

【読み】

こちふくやつくしのかたにつきかかる


【季語】

東風〈春〉


【語釈】

東風――東の方から吹いて来る風。特に、春に吹く東の風をいう。ひがしかぜ。こちかぜ。

[精選版 日本国語大辞典]


筑紫――古く、九州地方の称。九州地方全体を指す場合、九州の北半、肥の国・豊国を合わせた地方を指す場合、筑前・筑後を指す場合、筑前国、もしくは大宰府を指す場合などがある。つくのくに。ちくし。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

東風が吹き、筑紫の方面に月がかかることである。


【付記】

ウメが咲いて東風が吹くころには菅原道真(845-903)がしのばれる。その風が道真の配所に月を吹き送ったようだとした。


蕪村(1716-1784)の真似をして下五を「雲かかる」とすることも考えたが、不穏な感じがしないでもないので月にした。「月」は秋の季語だが、ウメと取り合わされることも多い感じがする。


【例歌】

こちふかば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春をわするな 菅原道真


【例句】

のうれんに東風吹くいせの出店かな 蕪村


ふなずしや彦根の城に雲かかる 蕪村

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