七日目

ついに僕もホストになって一週間目になる。

その日は、昼にバイトが入っていたため忙しい日になった。

朝の出勤ラッシュにかぶり高田馬場に向かうまで満員電車に揉まれていた。

僕のはその電車で人間らしさとは何だろうと考えていた。

シャンパンタワーを囲んで有頂天になっている人間と、朝の電車でうつろな目で出荷を待つように揺れる人間も、僕はどちらも人間らしくないと思う。

これは僕が子供だから、社会を知らないからそんな人たちを見下すようなことを考えてしまうのか、それがわからない。

ただ一つ言えることは、こんなはずじゃなかったということだけだ。

朝の新宿の駅はそんな顔をした人間で溢れている。

子供の頃は、僕はどんな大人になりたかったんだろう。

そうだ、僕はパティシエになりたかったんだ。

自分の手から美しいものが生まれるのが好きだった、書きながら思い出した。

もし過去の自分に合えるとしたら、その時はなんて謝ろう。

閑話休題。その日のバイトはご年配の方の案内や荷物を預かる仕事で、ずっと立ち仕事だった。

夕方ごろに終わりそのままホストクラブへと向かう。

今度は若い女に対して接客をしなくてはいけない。

就業時間の1時まで何とか乗り越えなくてはいけないと考えると、ヘアメイクに向かう足取りは重くなる。

眠眠打破を入れて、出勤すると先輩も同じようにカフェインを入れていた。

きっと、先輩も見えないところでずっと動いているのだろう。

ホストが楽に稼げるなんて嘘だ。

売れている人は動き続けているし、ホストには賞味期限がある。

30歳で高齢と言われるような場所だ。

見た目にも気を遣うのが仕事だ、色々な気苦労も多いのだろう。

ホストには売れる要素が、5つある。

一つ目は継続力、ホストは様々な理由で辞めていく人間も多い。

新人ホストの離職率は高く、七割近くが一か月の間に辞めていく。

二つ目は接客力、これは経験でしか培われない。

これは他の業種に比べて、人と密に接する水商売の特徴だろう。

三つ目は見た目、これはわかりやすいだろう。

もちろん顔が悪くても売れているホストはいるが、良いに越したことはないだろう。

四つ目はマメさ、商売相手が若い女性ということは大変だ。

僕が最初に教えられたのは顧客をコントロールしなくてはいけないということだった。

五つ目は根性だ、これは体力とも言い換えることができるかもしれない。

継続力とも近いが、基本的に負けず嫌いで負けん気が強い奴が売れる。

わかることはホストも一つの職業ということだ。

僕はここで培われ能力はこの先も生きてくると感じている。

だから先輩から盗める能力は、盗めるだけ盗もうと思う。

今日は枝の接客にも、失敗しずっと洗い場でグラスを洗っていた。

正直、屈辱的だった。

濃い一週間で、疲れがどっと出て、体が重かった。

風邪は治っておらず、悪化するばかりだ。

やめていくやつの気持ちもわからなくもない。

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