強力な支援者
文化祭が終わると次は僕達のライブの第二弾。
目まぐるしく忙しいバンド活動。
次回は12月24日
クリスマスイブに僕達の定期ライブVol,2を開催する。
前回のライブの最中や文化祭でも大量にチケットが売れたので11月上旬には2000枚あったチケットは全て完売していた。
2000枚以上売ってしまうとライブハウスに来客するお客さんが溢れてしまい入場できなくなる恐れがあるので2000枚で販売を止めていたのだ。
残り1ヶ月以上の時間は練習に励んだ。
第二弾にして集客力はライブハウスのキャパの限界を超えたのだった。
本来であればもう少し人が多く入れるライブハウスに変更を考えても良い段階なのだが僕達は恩のある吉沢さんの店で続けたかったので次回からは「限定2000枚」のチケットを全面的に告知して限定販売をするようにした。
いよいよライブ当日だ。
この日はクリスマスイブでもあるので街中がクリスマスムードだ。
入り時間前から並んでくれているお客さんもどことなくクリスマスを漂わす雰囲気だったりもしたし、カップルでクリスマスのデートとしてライブに来てくれている人達もいた。
大切な日に僕達のライブを楽しみに来てくれたのだ。
絶対満足させたいと気合が入る。
入り時間となり、各バンドが店に入ってくるなり早速リハに入ってもらう。
僕達主催3バンドは店内の飾り付け。
せっかくなのでクリスマス仕様にデコレーションする。
主催ライブも2回目となれば段取りもよく、スムーズに準備が進んだ。
やがてリハが終わり開場時間となる。
お客さんが大量に入ってくるのを僕達主催3バンドは前回同様にステージで迎える。
恒例のフリートークだ。
開場30分ほどで今回は500枚用意していたオリジナルCDが売り切れる知らせが入る。
つまり最低でも500人が来場したのだ。
今までにない勢いだ。
何人来るのだろうか?
今回は僕達は9バンド目の演奏だ。
開演してからは長時間やる事がないのでさまざまな人達と話をしてライブを楽しんだ。
第二弾であるこのライブは今までに経験した事ないくらい来場者で溢れていた。
フロアもバーエリアも人で溢れ、店内を動く事が困難になっていく。
人が多く集まるとその分トラブルなども起こる。
バーでお酒を飲みすぎた人が暴れているのだ。
僕達はまだ中学生なので止めに入るのが怖かった。
だが主催として止めにいかないといけない。
全員で止めに行くが大声で怒鳴られ恐縮してしまう。
『そもそも中学生のクセに調子乗りやがって!』
罵倒が始まり僕達は怖くて止める事も出来なくなって困っていた。
中学1年生、2年生から見たら20歳前後の人なんて住む世界の違う大人だ。
経験も体格も何もかもが違いすぎる。
あのあきちゃんですら言い返せず困っていた時、1人の男性が入ってきた。
『おい、俺が代わりに相手してやろう。
こいつらの敵は全部俺が潰してやる。』
『お前らの演奏までには戻るから安心しろ。』
僕達にそう告げると大柄な男性は暴れる酔っ払いの首を掴みそのまま外に連れ出した。
僕達は心配になったが怖くて追いかけられなかった。
Anotherのゆうじくんにその事を告げ、ソワソワしながら男性が戻ってくるのを待った。
ゆうじくんも一緒に待ってくれた。
30分もしないくらいでその男性は戻ってきた。
『話はついたからもう安心していいぞ。演奏楽しみにしてるからな。』
優しい笑顔になるその男性を見たゆうじくんは少し青くなる。
『まことさんですよね…あ…あの…
本当にありがとうございます。』
ゆうじくんが知っている人だったみたいだ。
『俺はNo Nameの大ファンだ。こいつらが困ってたらどんな相手でも俺が潰してやる。』
まことさんと呼ばれた人はそう言い僕達に笑顔を見せてくれた。
『ありがとうございます。本当に怖かったからすごく助かりました。』
あきちゃんがお礼を言って僕達全員が続けてお礼を言う。
ゆうじくんに言われVIPルームの席を確保して招待する事になった。
お礼をしようとの事だったのだ。
『まことさんはこの辺りを仕切ってる暴走族を少し前までまとめてた人だぞ。
不良とかバンドマンで知らない人とかはいないんじゃないかな?』
まことさんの事を聞かせてくれるゆうじくん。
すごい人なんだと言うことはわかったが、中学生の僕達はまだ不良の世界をそれほど知らないのであまりピンと来なかった。
2年前に暴走族を引退した20歳のまことさん。
今でも現役の暴走族の人達のカリスマらしい。
『お前達は若いのにすごい演奏をするから注目を浴びている。
今後もあんなトラブルを持ってくる奴もいると思うからSPを入れた方がいいぞ。
セキュリティポリスって意味だ。警備員みたいなもんだな。
今後のライブは俺がSPをしてやろうか?』
まことさんが自ら僕達のライブを正式に守ってくれる宣言をしてくれる。
『まことさんがいてくれたら安心だね。
お願いしてもいいの?有名な人なのに私達が甘えてしまってもいいのかな?』
あきちゃんは少し困惑しながらまことさんに再確認した。
『俺はNo Nameのライブをこれからも応援したいと思ってる。
お前達がライブを重ねて成長していくのをSPという立場で関われるならそれは最高の事だ。
それとそんな丁寧に話さなくてもいいぞ。「まこっちゃん」とかで良い。仲良くしよう。』
僕達の事が特別なのだと言ってくれてすごく親切な扱いをしてくれた。
僕達が「まこっちゃん」なんて呼んだらそこらへんの不良達に囲まれてリンチされそうで怖い。
そんな冗談を踏まえながら雑談が弾む。
次回からは「まこっちゃん」がSPとしてライブを護衛してくれる事になった。
VIPルームで楽しく話を聞かせてもらいながらライブの時間は進んでいく。
不良の世界は未知の世界だ。
ドラマや漫画などで見た事がある世界でも、実際にその世界で生きてきた人から話を聞くのは初めてですごく刺激を受けた。
僕達はまだ若く、経験も浅い。
まこっちゃんの人生経験は豊富で、話を聞くのが楽しくて仕方ない。
あっという間に僕達の出番の時間になって準備のためVIPルームを後にした。
酔っ払いが暴れたせいで少し減ってしまったお客さんも気がつくと元通りとなり、フロアはパンパンに人で溢れかえっている。
支援者、協力者、お客さん
多くの人がライブを重ねる毎に増えていく。
こうして多くの人と次々繋がっていく事も1つの魅力的要素であり、同年代の他の人たちはまだ経験もした事の無いようなかけがえのないものだと感じた。
第二弾として開催した冬のライブは前回の夏の開催よりも大きく成長した素晴らしいライブとなり大成功して多くの人が楽しんでくれた。
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