2回目の文化祭

8月のライブが終わり、僕達は次のライブに向けて準備を本格的に始めた。

毎週土曜日のミーティングはもちろん、作曲にも時間を大量に必要とする。

集客ももっともっと頑張らないといけないので新規のお客さんを獲得するために街中で音楽活動をしたりフライヤーを配ったりと様々な活動を行なった。


9月に入るとあきちゃんの学校の教頭先生からまどかちゃんを通して提案があった。

『今年の文化祭は参加バンドとしてではなく、ゲストバンドとして演奏してくれないか?』

僕が演奏を可能とする為に、特別枠を用意してくれたのだ。

まどかちゃんの学校への働きかけも影響が強いと思う。ありがたい。



文化祭のポスターに僕達の事が大きく描かれる事になった。

1995年度文化祭

今年は街で人気急上昇の人気バンド『No Name』がゲスト演奏決定!


学校内で大きく宣伝され、早くも文化祭の話題で持ちきりとなった。

今年はオリジナル楽曲を文化祭で披露する。

ライブには来れていない人や、去年を見ていない1年生の人達をファンにするチャンスなのだ。

曲はライブに来ていた人が聴いたことある曲にするため、CDに収録した曲を3曲選んだ。

後は野となれ山となれでアンコールに対応しようと思っている。

今年はやりっぱなしではいけないので最初から教頭先生にアンコールがあった場合、5曲まで延長すると伝えて許可をもらっていた。



前回はゲリラ的な参加だったのだが今年はしっかりと僕が入っていても問題がない配慮をしてくれていて教頭先生が僕達を推してくれている事が伝わる。

僕達の使命はこの文化祭で最高の演奏をしてより学生達の音楽活動に影響を与える事。

多くの人に感動と音楽の楽しさを伝えようと練習に励んだ。


学校では昼食を食べるお昼の休憩の時に放送で音楽が流れているのだが、その時間に僕達の曲もおり混ぜて流してくれていた。

学校は僕達の活動に全面協力してくれているのだ。

おかげで僕達の曲を歌える程度に覚えている人が多く増えた。

文化祭当日、盛り上がる事を確信して楽しみに感じる。


集客をしなくても多くの人が聴いてくれる文化祭。

僕達は12月のライブの準備もしながら文化祭の準備も進めていくのでスケジュールはかなり忙しい日々になった。

音楽を始めたいと憧れていた小学生の時を思い出しながら、現在はライブと文化祭がブッキングしていてとても中学生とは思えない忙しい日々に成長を感じていた。


文化祭当日

今年は例年にない観客数だそうだ。

1000人キャパの体育館には人が溢れ、2階の応援席ですら全て埋まっている。


学生のみんなも僕達の事を家で話してくれていたそうで多くの人が観に来たみたいだ。

応援してくれる人達が次々と増えていく。

応援してくれる人たちの存在に大きな力を感じてやる気がみなぎる。


自分達の力だけではここまではいけなかっただろう。

学校が全面協力してくれるのは、これ程までに影響力があるのだ。

この学校の文化祭だけは絶対に裏切るわけにはいかない。

絶対に大成功させて盛り上げる!



学生達の演奏を聴きながら出番を待つ。

後ろめたい事が今年はないので、去年にはない余裕を感じながら。

この学校のライブはレベルが高い。

学生の演奏を聴いていてライブハウスですぐにでも演奏できそうなグループも多い。


あきちゃんはそんな演奏の上手いバンドを集めて何か出来ないかと企んでいた。

今後、一緒に何かが出来る可能性のために、演奏がうまいバンドの人に話しかけたりして仲良くなっていくあきちゃん。

また大きな事を企んでいるのだろう。

あきちゃんなら何をやっても成功させるんだろうな。



文化祭は盛り上がりみんなのテンションも高く、あっという間に僕達の出番が回ってきた。

『本日のトリ、この街で人気急上昇のNo Nameの方々にゲスト出演です!

大きなライブを繰り返し最も勢いのあるこのバンド!!

テレビで観るようになる日も遠くないかもしれませんよ。』

『それではそんな大人気バンドの演奏をお楽しみくださいっ。』


進行のMCも今年は特別な紹介をしてくれた。

こそこそとしていた去年とは違い、今年は歓迎されて演奏するのだ。

気持ちがいい。


僕達は大歓声の中、演奏を始めた。

オリジナル楽曲なのに大合唱が始まる。

学校で曲を流し続けてくれていたからだ。

おかげで僕達のテンションも1曲目から急上昇。


あきちゃんの煽りに客席は熱狂する。

僕達の曲を、一丸となって1000人以上の押し寄せた人達と共に堪能する。

アドレナリンが垂れ流しとなって全身を駆け巡る感覚。

脳で感じる幸福感が最大限に達して夢の中にいるように感じる。

今年の文化祭ライブは狂気の盛り上がりで5曲を駆け抜け大成功に終わった。

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