次回は主催ライブ

Anotherの出番になった。

ベテランバンドなのでAnother目当てのお客さんも多く、多くの声援を集めている。

さすがだなぁと感心しながら聴いていると曲の合間にボーカルがMCを入れる。

『共演して仲良くなったNo Nameの演奏を聴いて私達は非常に刺激を受けました。

中学生とは到底思えないクオリティで私達は経験なんてど返しで実力で負けてるんじゃないかと危機感すら感じています。』

『もっともっと練習して最高の音楽を作って行きたいと思っています。

この街の音楽をもっと盛り上げたい。

No Nameの子達、聞いてたらステージに来てくれないかな?』


僕達を呼んでいる。

こんな事あるの?行ってもいいの?

そんな事を考えながらちえさんの方を見た。

『行ってこい。指名だぞ。』

ニヤリとするちえさんに言われ僕達はステージへ急いだ。


MCの後に1曲演奏をしていたAnother。

曲の途中で僕達はステージへ辿り着き演奏が終わるのを待っていた。

演奏が終わりステージへ上がっていくとあきちゃんがマイクを入れて話しだす。

『ご指名ありがとうございますぅ。No Nameボーカルのあきですぅ。

当店はお触りは禁止なのでご注意くださいっ♪』

『キャバクラじゃねーわっ!』

Anotherのボーカルのツッコミによりフロアは大爆笑

そしてAnotherから大勢のお客さんの目の前で対談が始まった。

『今回が初ライブってのは本当なの?』

質問形式だ。あきちゃんは受けて立つスタイルだ。

『あきが引っ越しをする時にお別れ会でゆうちゃんと一緒に2人で演奏した事があるのと、去年の学校の文化祭で演奏したよ。コピー曲だけど。』

正直に話す。

『つまり本格的にライブハウスでお金を払ったお客さんを目の前にするのは初めてか。』

Anotherのボーカルとの対談は進む。


『次のライブとかは決まってるの?』

僕達は次の予定なんて何もわからない。

ひとまず初めてやってみて反響を見て考える物だと思っている事を伝える。

『充分な反響はあったと思うし次を決めておいて告知しておいた方がいいと思うんだ。

今日来てるみんなもキミ達の次のライブが気になってると思うんだよね。

ねぇ。みんなそうだよねぇ?』

Anotherのボーカルがフロアの観客に問うと大歓声が上がる。

『僕達Anotherが主催で4ヶ月後の8月、ライブをしようと思っているんだ。

一緒に共同で主催をやらないかい?』

次のライブのお誘いだ。

あきちゃんは即答で答えた。

『もちろんっ♪やりたいですっ!!

今日1日ずっといろいろ親切に教えてくれたAnotherさんだもん。

一緒に盛り上げましょう。』


観客から再び大歓声が上がった。

僕達の演奏が次はいつなのか気になってくれてたと言う事だ。

それにしても主催なんて大丈夫なのだろうか?


『詳細は打ち合わせて決めていこう。

わからない事はバッチリサポートするから。

って事で次回はAnotherとNo Name共同主催のライブですっ♪

もちろん来てくれるよねっ?』

観客に問うとみんな大歓声で多くの人が行くと答えてくれた。

次のライブがこうして決まってAnotherの出番が終わった。



最後のトリのバンド空彩と入れ替わる。

空彩のボーカルがマイクを受け取るとすぐに

『おいおい、私達にそんな面白そうなライブの話をせずにステージから降りるのか?

当然私達も誘ってくれるんだろうね?』

Anotherのボーカルが戻ってくる。

『参加したいのかい?僕はいいと思ってるけど共同主催のNo Nameの意見も確認しないと僕だけでは決めれないなぁ。笑』

冗談まじりにふざけながら僕達に振られる。

あきちゃんは走ってステージに戻りマイクを奪い取る。

『じゃあさ、トリに相応しい最高の盛り上がりを見せてくれたら一緒に共同主催ね。

盛り上がりがイマイチだった場合「頭を下げるなら」仕方なく参加させてあげる。笑』

ニヤリとあの表情で大ベテランの空彩を煽るあきちゃん。


フロアから笑い声が沢山聞こえ、空彩のボーカルが答える。

『これはこれは主催様のクソ生意気なご提案を頂き光栄です。

共同主催参加の栄光に向けて長年の経験を全てぶつけてきます。

どうか寛大なジャッジでお願いしますぅ。笑』


和やかな雰囲気のまま空彩の演奏が始まった。

本日の大トリ演奏である。

大ベテランの実力はやはりすごい。

演奏が始まった途端に空気が変わり観客は釘付けになる。


さすが最後のトリに選ばれるだけのバンドだ。

学べるところは全て学びたいと、僕達はバックヤードからしっかりと見学した。



全ての演奏が終わり閉演時間となる。

お客さんが店から出て広いフロアに僕達は集まる。

ライブの運営者から集客の発表と来場バックの受け渡しである。


来場バックとは、チケットを持って店にライブを見にきた人の数×200円がライブハウスから還元されるシステムの事だ。

僕達が納金した1500円の中から1000円が運営者の元に入り、ライブの経費や会場のお金を支払うために使われる。

残りの500円の内訳が来場者に配られるドリンクチケット代が300円で残りの200円が集客したバンドへ還元されるのだ。


チケットを買ったけど来なかった人の分のこの500円は主催者の物となる。

僕達が受け取った来場バックは46400円

販売した320枚の内、232人が来てくれたのだ。

チケットを買ったけど来ない人は一定割合はいるらしい。

70%の集客率は結構多い方だと聞かされた。


そして僕達は全バンドの中で集客人数は1位だった。

初ライブですごいとみんな褒めてくれて嬉しかった。


僕達はチケット販売で得た16万円の差額収入と来場バックの46400円

20万6400円も1回のライブで稼げてしまったのだ。

中学生としては恐ろしい大金だ。

お金で僕達が狂ってしまわないように、スタジオ代や消耗品の購入費などバンド活動に必要な費用以外はまどかちゃんに預けてお金を管理してもらう事にした。

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