オリジナル楽曲作り
文化祭が終わり、僕達の次の課題は曲作りとなった。
コピーバンドからオリジナル楽曲をやるバンドに変わったのだ。
演奏できる曲は何もない。
まどかちゃん(西村先生)は僕達が目標を持って前向きに練習が出来るように、僕が小学校を卒業して全員が中学生になってから4月にライブをブッキングしてくれると言った。
楽曲も少ないし経験もないので対バンライブに参加する事になった。
つまり、4月までに演奏できる曲を数曲作っておかないとライブにならないのだ。
あと半年、持ち時間は1バンド30分くらいだそうなので5曲くらいは作っておきたい。
1ヶ月1曲ペースなんて出来るのかな?
不安でいっぱいである。
まどかちゃんから聞いた曲作りのコツとしてはまずは歌詞を作る方が作りやすいらしい。
歌詞を作るために日常生活などで気になった言葉を少しずつ集めて溜めていき、組み合わせると歌詞を作りやすい。
さらに辞書などで他の言い回しや比喩表現を用いると曲に深みが出ていくそうだ。
僕達はみんなで日常の生活の中から言葉を集めた。
10月20日のあきちゃんの誕生日、小学生の僕からすればとてつもない大金
5000円近くもするボイスレコーダーをプレゼントした。
日常の言葉集めにも使える。
歌うときに手軽に録音するにも使える。
ボーカルのあきちゃんにはすごく便利で画期的なアイテムだ。
あきちゃんもずっと欲しがっていた物なので最高のチョイスだったと思う。
ボイスレコーダーの力もあり、フレーズのストックはみるみる溜まった。
ストックされたフレーズを組み合わせたりしながら僕達は歌詞に仕上げをしていく。
初めて完成した詞はほとんどあきちゃんがストックした言葉から出来たのであきちゃん目線の、とても可愛くポップな感じに仕上がった。
歌詞に僕達も出てくるから少し恥ずかしい。
曲を作る行為とは僕達がゼロから音楽を生み出す事なんだと実感した。
詞を何回もみんなで読み返しながらイメージをよく聴き具現化するように音をつけていく。
イメージに合わせ次々とフレーズが完成していく。
曲を作るのはすごく難しく根気のいる作業だったけど、だんだんと曲になっていくにつれてすごく楽しく達成感もある充実した時間だった。
みんないろんなアーティストの数多い曲を聴き続けてきた人達なので、フレーズのバリエーションの引き出しは豊富だった。
曲が一通り完成するとスタジオに籠る。
自分達で作った曲なので練習していなくてもめちゃくちゃ上手く演奏できた。
作っている段階で何度も歌ったり演奏を繰り返したので充分な練習をすでにしているのだ。
全体的に通して演奏しながら手直しや微調整を繰り返す。
より良い音楽へと修正していくうちに練習は不要なレベルに達する。
オリジナル楽曲だと練習する時間はあまり必要がないので結果的にコピーと変わらないくらいの時間で持ち曲が1曲増える事になるのだ。
冬休みにはまた、あきちゃんの家に泊まり込んでの冬季集中合宿(?)も行い次々と僕達のオリジナル楽曲を生み出していった。
メンバーそれぞれの感性が主張したフレーズを集めるので、バリエーション豊かないろんな雰囲気の曲が完成していく。
3月に僕が小学校を卒業して中学生となり、あきちゃん達は中学2年生へと進級する。
同じ学校ならどれほど活動が出来たんだろう。
少し悔しくジレンマを感じながらも僕はあきちゃんの所へ通い続けた。
オリジナル楽曲を演奏するバンドになったからにはコピー曲は演奏したくない。
楽曲にストックが出来るまではひたすら曲を作り続けるしかないのだ。
ワンマンライブとかになるともっとたくさんの持ち曲が必要になってくる。
まだまだ先の夢物語なのだ。
ワンマンまでとはいかなくても、曲数が多いに越したことはない。
場の雰囲気などで選曲を臨機応変に変更できるようにするためにも曲数は必要なのだ。
まどかちゃんと約束した4月のライブ
このライブで僕達はオリジナル楽曲を初披露するのだ。
中学生バンドが参加する時点で、すでにもの凄い注目を集めている。
作曲が間に合わないなんて事にならないように僕達は必死で曲作りを続けてきた。
おかげでなんとか、ライブの日までに完全オリジナルの楽曲が6曲になっていた。
この6曲で勝負しようと僕達はライブに向けて音合わせを繰り返した。
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