ライブハウスデビューは集客から

今までのライブといえば

あきちゃんのお別れ会でのミニライブ

文化祭のゲリラライブ

2回のライブ経験をしたのだが、本格的にライブハウスでするライブへの参加は今回が初めてだ。

しかも対バンライブである。


対バンライブとは

複数のバンドが出演するイベント形式のライブの事だ。

各バンドが集客を行うので僕達の事を知らないお客さんも沢山いる。

ファンを多く獲得するチャンスなのだ。


今回のライブ詳細

1995年4月23日(日)

入り10時 開場12時 開演13時 閉演18時

参加バンドだけが会場に入り、リハなどを行う時間が「入り」である。

お客さんが12時に入ってきて13時から演奏開始する。

リハは1バンド10分だ。


チケット1枚2000円 1ドリンク付

チケットを売るのは僕達参加バンドの仕事だ。

チケットバック500円(売ったバンドへ還元される)

来場バック200円(入場者数×200円がライブ終了後に還元される)


チケットのノルマは1バンド100枚

チケットバックの金額は差し引きして先に100枚を買い取りさせられる。

1500円×100枚=15万円だ。

僕達にそんな大金は搾り出せない。


チケット代金を支払うと同時にチケットを受け取れて参加が確定する。

チケット販売も時間が必要なので早い方が当然有利だ。


まどかちゃんが15万円を立て替えて払ってくれて1月の2週目あたりにはチケット100枚を受け取っていた。

チケットの販売価格は2000円なので75枚売らないと赤字になるのだ。

僕達はあきちゃんの学校で教頭先生に相談した。

初ライブが決まった事、オリジナル曲で対バンライブに参加する事。

チケットを売らないと赤字になってしまう事。

正直に全て話して相談すると快く力になってくれた。


学校にライブのフライヤーを置いてくれて、ポスターを目立つように貼ってくれた。

それと別に学校が作成してくれた僕達がライブ参戦する事を大体的に推したポスターを一緒に貼ってくれたり、放送部にお邪魔させてもらって校内放送で宣伝させてくれたりと様々な協力を得る事が出来た。



1月からチケット販売をし始めたので、お年玉効果もあり学校からの全面協力も力を発揮して初めてのチケット販売とは思えないくらい飛ぶように売れた。

学校だけで200枚以上は売れているのだ。

また、買ってくれた子が友達にも宣伝してくれていて次々と追加で売れるチケット。


もっと売って実績を残したい僕達は、街で歩く人にフライヤー配りをして宣伝したり、駅前でゲリラパフォーマンスとして歌ったりしながら少しずつ自分達の力でもチケット販売を積み重ねた。


チケットは無くなっても主催者から1枚1500円で買い取る事が出来る。

しかも追加分に関しては1枚単位で必要枚数だけ買い取れるので在庫を抱えすぎずに済む。

追加チケットはいくらでも出てくるのだ。

売れば売るほど利益になるから主催者は喜んでチケットを出してくれる。


僕達は頑張ってチケットを売り続け、ライブ当日までに320枚のチケットを販売した。

チケットを主催者から買い取った金額が合計48万円

チケットの販売金額が合計64万円

差額だけで16万円も手元に残ったのだ。


さらにライブが終わった後に来場バックが入る。

一体いくら稼げるのか楽しみだ。

お金やチケットの管理は僕達はまだ中学生だし、扱うのが怖かったのでまどかちゃんに任せた。

こうして集客も全力で頑張って、出来る事をやりきりライブ当日となった。



入り時間の1時間前に僕達は集まっていた。

ライブハウスの近くの24時間営業のファミレスでモーニングを食べながら僕達5人とまどかちゃんで今日の意気込みを語る。

初めて関わるバンドの人達がたくさんいるのでしっかり挨拶するように言われる。

僕達は最年少なのだ。


『あざとく緊張している風に装えばみんな親切にしてくれるからしてなくても緊張してるフリをするんだよ。』

『みんな先輩風を吹かせたいからわからないことは先輩達に頼って質問するんだよ。』

まどかちゃんは中学教師が生徒に絶対に言わないような事を懇切丁寧に教えてくれた!笑


ライブのフライヤーに堂々と、僕達の事は書かれていたので注目を浴びている。

中学生バンドのデビューライブだし、人々の目を引きそうだから仕方ないか。

中学生のみで結成された新バンド「No Name」のライブハウス初デビュー

なんて書かれているのだ。

「所詮中学生か」と言われたくないので完璧な演奏をしなければいけない。


僕達はそのためにしっかり曲を作り込み、練習を繰り返して音を完璧に合わせ準備してきた。

ついにその本番の日なのだ。

集客も僕達は可能な限りやり尽くした。


僕達の事を知ってくれている人達も沢山来てくれるだろう。

応援してくれるだろう。

新しくファンになってくれる人も沢山いるだろう。

期待を胸に、ついに入り時間となり僕達はファミレスからライブハウスへと移動した。

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