3.忘年会
週末。
営業部の忘年会は開かれた。
上司の乾杯の音頭から始まり、一時間もすれば皆酔いが回り、好き勝手なところに移動して飲み食いしおしゃべりをしていた。
彰の周囲では彰と彼女の話題で持ちきりだった。
酒の回った男性社員たちの質の悪い、少しHな質問も飛び交っていた。大声で彰を揶揄うように話すから、離れた私たちの所まで会話が聞こえてくる。
ほんっっっとに、聞きたくもない!
彰も私がいるせいか、あまり語らない。
その代わりになぜか同期の男性社員が答えている。
つまり、その同期には私と付き合っていたことは言わなかったくせに、今の彼女の話はしていたんだな。
胸糞悪い!内緒にすると決めたことだったけど、イラっとする。
フラれた自分自身とまだ引きずっているこの感情が情けなくなってくる。
私はいつもより早いペースでハイボールをお代わりしていた。
***
「倖~」
彰に絡んでいた同期が赤い顔をして酎ハイ片手にこちらにやってきて、今度は私に絡んできた。
「彰も彼女できたしさ~、寂しいもん同士、付き合うか?」
飲み過ぎた同期の男が私の肩を組んできた。
「寂しくないし付き合わない。肩組まないで」
「強がらなくていいぞ」
「強がってないし。腕どけてよ」
隣に座って退かしても退かしてもしつこく肩を組んでくる同期の腕を押しやる。
ずっとへらへらした笑みを浮かべてくっついて来る同期にイラついた私は彼の顔を睨む。
「ホントに嫌なんだけど!」
「睨むなよ、彰の彼女見習えよ、いつもニコニコしてんだぞ」
はあ!!??彰の彼女ぉ!?
「先輩。セクハラしてますよ。いくら酔っ払いでもアウトです」
同期との間にスーツ姿の誰かが入ってきた。
「なんだ、前野か。倖は気にしないからセーフなんだよ。な、倖」
「気にしないんじゃない、訴えて先輩がクビになったら可哀そうだから我慢してくれてるだけでしょ」
「はあ?」
「セクハラはセクハラ。謝ってください」
前野君の強気な態度に同期は、不満そうではあったが謝って離れた席に移動していった。
「前野君、ありが「キャー!前野君最高!」」
「かっこよかった!!」
お礼を言いかけたところで前野君は周りの女子社員に囲まれてしまった。
この女性陣を乗り越えていく勇気はないわ。
…スマホにお礼を送っとこう。
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