第七章 レインボー。

Episode 031 それは、色づき始めなのか?


 ――最近のことだった。私は着るものに色を付け始めたの、無意識に。



 だからと言って、お洋服に色を塗っているわけではなくて、街へ出る機会があったからなの。都会というには程遠いけど、ちょっとしたショッピングモールへ誘ってくれた。


 サンタ君と二人、並んで歩いた。


 久しぶりに購入、お洋服。試着室で着てみると、広がる色彩……これまでは白と黒だったけど、ある意味では初めての試みだった。私服が色鮮やかになってゆく過程さえも。


 鏡に映る私……


 でも、脳内でチラつく葛城かつらぎ咲姫さきのこと。まるで先程までの小雪のよう。青と黄色の鮮やかなカラーリング。どうしても意識してしまう。まだ不登校は続けているけど、もうそろそろ終わるような予感がしていた。私に見える景色が、色づき始めてきたから。選ぶお洋服も、黄色や赤……彼女が青なら、私は赤にしてみようと思った。何故かそう思った。


 シャーッと開いたカーテン。試着室から店内の景色へと広がる。


 サンタ君はいる。細やかな私の荷物を持って待っていた。笑みを浮かべるサンタ君、決めたのは情熱の赤とアクセントとなる黄色……それを混ぜ合わせると橙色。橙色なの。


 今着ているワンピース。


 コートに合わせた、茶色のコート。赤系統で飾っていた。


 ジャリッと歩く、少しばかり固まっている雪の上。やや固まっているから。その上に静かに重なる雪。小雪から雪へ成長を遂げていた。深々と、深々と。帰り道のこと……


 並んで歩く帰り道、バッタリと出会った。


 偶然にしては、よく会うの。これで七回目。三回目までなら偶然で済まされるけど、


「もう偶然じゃ済まないよ、葛城さん」と、言った。


「おいおい偶々会っただけなのに酷い言われようだな。ここは公然の場、自分がどう歩いても文句を言われる筋合いはないけど? それとも何か? 赤い糸とでも言うのか?」


 そうなの、最近はこの調子なの。とにかくよく会うの。だからって、私は……



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