Episode 029 それは、森林のように緑色?


 ――ヌクヌクとキラキラとしたような、雪解け? 春の訪れのような錯覚。



 でも、冬に入ってゆく。ここから長い冬へ……


 あの日以来、私はお家。学校へ行かなくなった。体調の変化。腹痛から始まって頭痛も招いて、頑張って通学した時には、その途中で戻すこともあって、今はもう。


 お布団の中が殆ど。繰り返される夢の中。


 あの日の光景が再現される。マコちゃん……北浜きたはま真琴まことの「お友達ごっこだった」という言葉。脳裏で、脳の片隅だったはずの言葉が、いつしか脳内を支配していた。


 涙で枕を濡らすことは幾度も、幾度も……


 お祖母ちゃんは言う。「無理に学校へ行かなくていいから」と。号泣の域。


 そして夕方になると、それよりも速い時間にサンタ君が現れる。縁側から私のいる部屋にまで侵入して、まるでXマスのサンタさんのような感覚で。サンタ君だけにサンタさんのように。なら、笑顔で「今度のXマスプレゼントに期待してて」と言った。


 時間は流れてゆく……


 季節が移り変わる模様を、お部屋の中から。


 私は描き始めていた。脳内を踊る物語。心が回復してゆく物語。サンタ君と同じ、とある小説サイトの『書くと読む』でエッセイというのかな……書き始めたのだ。


 それは深々とした夜。


 最も暗い夜だったの。冬の、最も暗い夜……


 その時にスタートだ。中学一年生の冬から始まったエッセイ。サンタ君と同じ世界へ踏み込んだ。この暗い夜を切り裂けるほどに、私は強くなりたいと思ったから。


 ごっこでない、お友達。


 ふと思い出される、ママの言葉。今はもう、遠い昔のママの言葉……


『お友達、つくろうね』と、ピカピカの入学式の日に。赤いランドセルの懐かしき日。戻りたいと思うと、涙が零れてきた。あのままだったら、催眠術もいらなかったの……



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