Episode 027 それは、剣豪による剣劇か?


 ――思いの外、あまりにも早く訪れたこの状況。


 杏子色の夕方に、剣はぶつかり合った。高鳴る効果音も鋭さを増しながら。



 あの日の辻斬りの再現? 私の脳は、いつしか占領されていたのだ。別人格の手で。


 でも待って。少しばかり異なる。私の人格が残っている? クリアに見える程、今この時こと。目の前で起きていることが見えているの。姿形は別人格でも、二割を残して。


 誰と戦っている?


 剣を交えている相手。葛城かつらぎさんは、まだ現れていない。ブン君の方だ。剣崎けんざき文八ぶんぱち君。


 その傍にはもう一人。マコちゃんが満面な笑みで……囃し立てている。どういうことと思いつつ、その答えは、直接脳内で聞こえてくる。別人格の声がしたの。


 私の中で行われていることなのに、どうしようもなく気持ち悪かった。



 ――目を逸らさないで。


 これが、この子の正体だから。……お友達ごっこだった。



 聞き間違い? でも確かに、聞こえる笑い声。高笑いするマコちゃん。その影響で野次馬は集ってくる。正直なのは涙。堪え切れない涙だった。別人格は、そんな私に見せないようにしていた。でも、堪忍袋の緒が切れた。プッツンと音を立てて切れたのだ。私は剣豪のまま、別人格のミカに乗じて戦った。剣は青白く光って冴えわたる。


 押されるブン君。驚きの表情を見せた。


 笑みは消えていた。いつもの不敵な笑みはもう、彼にはなかった。でも対照的に、マコちゃんは高笑い。その中で「いい。とてもいいよ。最高の玩具だよ、あなた」と……確かにそう言ったの。その時だ、弾き飛ばしたブン君の剣。そして一思いに振り翳す剣は、


「許さない、私は玩具なんかじゃない」との台詞と共に、狙ったマコちゃんへの頭上。


 カイ―ン! との効果音と共に、受け止められた私の剣……現れる葛城さんだった。



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