第五章 青白き閃光。

Episode 021 それは、秋の始まりなのか?


 ――もう一か月。すでに二学期は始まっていた。


 時の流れに比例して、辻斬りに関する話題も薄れ、次第に消えつつあった。



 その向こう側には、新たな視線が……まるで標的を狙うかのような。気のせいかもしれないけど、直感的にそう感じた。明らかに、私を狙う者。敵なのか味方なのか……


 その印象しかなかった。


 杏子色の早朝。夏の暑さが薄れた頃、襲ってきた刃?


 それとも、少し違ってライトセーバーのようなもの?


 躱した。いや躱せた。運よく、本当に運がいいだけの話だ。なので、まだ襲い掛かってくるから逃げる。少しばかり距離を取るため。白銀のペンダントを掲げる距離まで。


 でも何? 異常な加速。そっと見れば、ローラースケートを履いている。そして振り下ろす、青白く輝くライトセーバー。長身で長髪。男性のように見えたけど、女性だ。


 杏子色を背景とし、青色のイメージで、


「逃げるな、斬ってやるから。理由は解ってるよな」


 とオーラ―だけではなくて、雷のような太刀筋までも。すると、響く金属音……


 私の前に立ちはだかる背中。男の背中。そこに広がる荒野が、私を包んでいたの。


 まるでバリア。鋼の板が、そのライトセーバーを受け止めた。私を守っているの。


「イトをやらせるわけにはいかなくてな。もう一つの人格が現れたら、俺と勝負する約束になってるんでな。俺は剣崎けんざき文八ぶんぱちという者だけど貴様は? さあ、俺は名乗ったぞ」


 すると、どれくらいの間? ほんの一瞬でも、その十倍に感じられる中、


葛城かつらぎ咲姫さき。貴様の後ろにいる奴の正体を暴く者。邪魔立てするなら貴様も斬るぞ」


 と言い放った。早朝に響くハスキーヴォイス。次の瞬間だ……


 スーッと消えた。声だけが遅れて「次の機会だな。覚悟しとけよ」との言葉を残して。


 ――何者?


 私もブン君も、多分だけど同じことを思っていたと思う。そう、彼女は何者だと。



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