Episode 017 それは、パラレルワールド?


 ――視線は、天の刃に。


 霧のような雨の中、私は遭遇したのだ。その、通り魔というのか辻斬りに。



 木は薙ぎ倒された。白煙を上げながら。天の刃が落ちた場所、隣り合わせだった。間一髪躱したのだ、天の刃も辻斬りをも。そして特徴的な黄色のシャツ、顔もハッキリと。


 満面な笑みを浮かべていた。


 剣崎けんざき文八ぶんぱち……ではなく、もっと意外な人で驚愕した。


 何と、女の子だったの。それだけではなく、知っている子だった。しかもよく知っている子で、最近では、ほぼ毎日、顔を合わしている子だ。


 ――マコちゃん?


 明らかに私に襲い掛かっている。木刀を構えながら、逃げる私を追いかけてくる。そこは誰もいない夜の舗道。水飛沫を上げながら転ぶ。濡れた舗道へ転んだの……


 霧のような雨は、次第に激しさを増していった。


「どうして? 何故こんなことを?」


 それしか浮かばない台詞。するとマコちゃんは、大きく木刀を振りかぶった。振り下ろす。そのまま……そのまま倒れた。そしてもう一人、女の子が姿を現した……


 マコちゃんの背後に隠れていたのか、どうやら操られていたみたいなの。その女の子が黒幕ってこと? 一連の辻斬り騒動も、ここで終幕ね。煌めく白銀のペンダント、彼女の目の前に翳した。私は問う、催眠術を行う前に「あなた名前は? 私は戸中となか糸子いとこ」と、名乗りもした。彼女は……多分、初対面? でも、何だろう? 初対面じゃない気もする。


 そう思っている最中、煌めく金色のペンダントが、私の目の前に翳された。


 えっ? 何で?


 どうしても目が追ってしまう、金色のペンダントが揺れる方向へ。


 その金色に輝くのは、同じく不死鳥。私の白銀のペンダントと同じ絵柄……脳内は真っ白に広がってゆく。私は「やめて」と叫んでいるにも拘らず、朦朧となって。



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