第四章 夏の風物詩。
Episode 016 それは、ラビリンスの中に?
――まるで暗い迷宮。今の校舎はそんな感じ。コツコツと響く二人の足音。
どうして歩いているのか? 何を追い求めているのか? 今問題になっている辻斬りを防ぐという大義名分のもとで、私はきっと、自分のために謎を解き明かそうとしている。
心の奥深くで蠢くものは何?
ダークな部分。なぜ今になってパパのことを? 復讐でもしたいの? そう問い詰めていた。私を殺そうとした相手なのに、それでも……それとも、このペンダントを使って発動させた能力に、何かあったのだろうか? 私はママを操って罪を被せたから。でも正当防衛だよね? なら、この記憶も本物だったのだろうか? そうとも思えるの。
私がパパを追い詰めた? マリー姫と入れ替わろうとして? そのような説も芽生えてきて、脳内には緑の葉が生えてきたような感じも。そんな中、伝うのは涙……
「イトちゃん、もう帰ろうか?」
と、脳に入ってくるサンタ君の声。……って、そこでハッとなった。見えるのは廊下と並ぶ教室。景色は一変したような感じがした。私は「あ、うん……」と返事をした。
「明日は、遊園地だね。偶には息抜きも必要だよ」
と、サンタ君は私の頬に伝っている涙を拭った。
「お化け屋敷は好きな方。でも絶叫マシーンは苦手なの」
と、私は答えた。サンタ君はクスッと笑って、
「観覧車はOKだね。ゆったり景色を見るのも、いいものだよ」
「じゃあ、誰かと一緒なのが大事だよね。サンタ君は、ずっといてくれる? 傍に」
少しばかり頬の辺りが熱くなった。これって……
「僕の方こそ、ずっと一緒にいて欲しいんだ。……いいよね、イトちゃん」
そのサンタ君の言葉が、まるでお空を泳ぐお星様みたいに煌めいたから、
「そんなこと言っちゃうと、笑っていられなくなっちゃうぞ」
と、照れ隠しにしても可笑しくて、そのまま彼の胸へ顔を埋めた。温かく温かく……
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