Episode 015 それは、ある種の通り魔か?


 ――夏の風物詩にはラムネだけど、怪談ということもある。


 例えば、この学校内にも起きている。ごく最近、辻斬りというのか、木刀で殴られた野球部員や、サッカー部員、ラグビー部員までも被害に遭っている。その現場に遭遇した。



 野球は九人。サッカーは十一人。ラグビーは十五人……共通点は奇数ということ。しかも事件に遭った日も奇数で纏められている。八月の後半から、お盆を避けた日から……


 十三日は特別。


 木刀ではなく、ナイフが刺さっていた。


 ……高鳴るサイレン。走り去る救急車。命に別条はないけど、試合出場がお預けになった野球部員。腕、投手なだけに、ある意味では命にかかわる。野球生命という名の。


 犯人は誰? アイスホッケーで使用する面で素顔を隠していた。


 でも、黄色のTシャツ。酷似している剣崎けんざき文八ぶんぱちが着ているものに。ナイフ……は同一犯かはわからないけど、木刀の太刀筋はまさにあの日、初めて我が部室を訪れた日に見せてくれた、サンタ君の肩を叩いたものとよく似ていた。或いは癖だ。あの日、彼は首を狙っていた。その次に脚、それから肩……ということは、サンタ君も只者ではない。そう思った時、鳥肌というのか、ゾクッ……とするものを感じた。


 サンタ君は彼の動きを読んでいたことになる。躱しに躱せる程に。叩かれた肩のダメージも最小限に抑えていた。私を庇う余裕がある程に。そして今、私は何故か……


 辻斬りの犯人を捜しているのだ。


 もしかしたのなら、その犯人が剣崎文八という可能性が大きいと思ったからだ。


 私なら、彼を止められる。


 私なら、この能力で彼をコントロールできるから。


 そう思いながらコツコツと廊下を歩く。薄暗い廊下。すると気配もなく、背後からガッと腕を掴まれた。サーッと血の気が引くのを覚えながら、後ろを振り向く。ササッとではなく恐る恐るというような表現で……「僕も一緒だから」と、サンタ君は微笑んでいた。



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