Episode 008 それは、賑やかな帰り道で?


 ――帰り道の前には、まだ教室への道程があった。



 まだ終わりではなかったのだ。


 入学式は始業式も兼ねている。翌日から授業に入るための準備でもあったのだ。ここに来る前は皆小学生、ランドセルを背負っていた。中学生になると制服に身を包んで、スクールバッグと呼ばれる、リュックサックみたいな感じのもの。それで登下校をする。


 これまでとは違った世界……


 教室にいる子、どの子も初めて会うような子ばかり。多分、さっきのような自己紹介は暫くの間は続きそうだ。しかしながら、サンタ君と同じクラスだから、心は軽かった。


 それに、いきなりニックネーム風な下の名前で呼び合うことになった、お下げの子。名前は真琴まことちゃんだから、マコちゃんという感じで。そう呼んでと言っていたから……


 席はその、マコちゃんと並んだ。


 教壇から見て左側。じゃあ右側には? サンタ君だった。


 担任の先生は名乗った。黒板に大きく描いた。それから声にするのだ。


にしき十三じゅうぞう」と。背の高い男性で長髪。後ろで束ねている。白いワイシャツの上に紺のベスト。紺のスラックス。スマートを強調。やや癖のある関西弁が特徴かも。


 それを機に鳴り響く……


 ウェストミンスタ―の鐘。小学校の時からの定番となるチャイムの音。


 生徒たちは一斉に帰り支度や、教室を出るなど忙しない。私とサンタ君も例外ではなく家路を急いでいた。帰り道も「逸れないで」と、手を繋いでくれたのだ。


 とても心強かった。


 大勢の生徒たち……とはいっても、年々少子化は進んでいるという社会情勢。一クラス二十四人。この入学式を迎えた一年生は三クラスとのこと。……あっ、因みにだけど、


「……何組だったっけ?」


「B組。一年B組。明日からもその教室だよ」と、サンタ君は笑みを浮かべて言った。



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