Episode 007 それは、入学式を迎えた後?


 ――続く桜並木。その道程は、まるで胸のトキメキを象徴しているようだった。



 舞う桜の花弁は、爽やかな風を予感させた。


 繋ぐ手の温もり、私にカラフルな場面を見せていた。脳内で脳内に……


 まだヒンヤリとする体育館。パイプ椅子に座っても、近くにはサンタ君がいる。それ程遠い距離ではない。帰りは一緒に帰るって、予め約束していたから、安心は安心。


 男子と女子で席は固まっているけど、心は落ち着いている。


 以前は、奇声を上げて取り乱したことも……蘇る記憶には。


 少し離れても、サンタ君の存在を意識するだけで、得れる安心。それにもう大丈夫という自身の奥から起きる、五感から起きるサインみたいなもの。それを信じている。


 そう思っているうちに……


 校長先生のお話が、まるで夢のように終わっていた。


 あとは後は? 食い入るように見る。夢から覚めて現実に戻るような感覚。それが証拠に、懐にしまってある白銀のペンダントの冷たさを感じる。金属の冷たさを。


 担任の先生の紹介だ。


 ……とはいっても、お顔と名前。その程度で、それに何? 其々の先生には担当教科というものがある? 初めてのことなので驚いた。これまでは確か……


 担任の先生が、そのクラスの全教科を見ていたと思うのだけど、そのシステムも変わったってこと? 私はきっとその時、驚愕な表情を浮かべたと思うのだけれど、


「ちょっと寒いよね、ここ。もうすぐ終わると思うから」


 と、声を掛けてきたの、お隣に座っている女子生徒が。お下げで、目がパッチリとしていて、まっすぐと私を見ている。言葉は、何か返さないと、と騒ぐ脳の中で、

「あ、ありがと」と、思わず返した言葉。


「私は北浜きたはま真琴まこと、あなたは?」と、早くも自己紹介? え、えっと、


戸中となか糸子いとこ……」「宜しくね、糸ちゃん」と、早速も下の名前? ニックネーム調で?



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