Episode 004 それは、ある種の出会いかな?


 ――小学生でもなければ中学生でもない、その間にある温い春の風の中。



 まるで夢を見ているような心地よさ。


 絵を描いていた。でも、習っているわけではなく我流も我流。コマ割りをしていることから、描いているのは漫画。そしてストーリーも流れてゆくの、BGMのように。


 絵の上手い下手は関係なく、ストーリーの上手い下手も関係なく、ある日突然、気が付いたら机の上に向かって描きに描いていた。とめどなく溢れる想像の行進。


 何かを残したいという想い。


 自分の中の一冊を作りたいという想い。自分の中で芽生える世界。ここから色づき始めてきた生活。お祖母ちゃんの笑顔が、私には太陽に思え……褒めてくれた。


 漫画のこと。


 私が初めて自ら行動したこと、と言って。


 その間だけは、白銀のペンダントのことを忘れられた。


 そんな日々が暫く続いた頃だ。セーラー服を仕立ててくれたのだ。学校へ行くか行かないかは別として……袖を通してみた。実は、心の奥底では、憧れだったの。


 鏡に映してみるも、お祖母ちゃんに見てもらうにも、


「うん、自慢の孫だよ」と、一言くれた。


 黒縁眼鏡の、あまり癖のないボブ。優等生にも見える趣だけど……「君、その制服、もしかして、あの五反田ごたんだ中学校の?」と、ジッと私を見る男の子。ここは家の中だけど、縁側というのか? お庭というのか? 中途半端にお外で、近所の男の子かな?


 というわけで、


「君、誰?」と、単純に問うことになって、


星野ほしのサンタ」と、その男の子は答えた。いや、名乗ったのだ。


 驚きも驚き、……サンタという名前に。よく見れば、青い目をしてブロンズの髪をしていて色も白く、ハーフな趣。そして私は「戸中となか糸子いとこ」と、名乗り自己紹介の場となった。



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