分かれ道と袋小路
あなたは善良な村人だった
善良になることを強制されて生きてきた
もうたくさんだ
だから
しなければいけないだけの仕事も捨て
与えられただけで意思の介在しない使命を捨て
でも、確かな気持ちだけは、心からの意思だけは持って
村を出て、逃げ出した
行く宛など知るものか
あてがなければ行動してはいけないのか
いやそんなわけはない、ひたすら走り続ける
村を出ることは当然掟に反する
そんな掟は我々に強制する効力などない、見えないはずのものだが
盲目な自警団は、私を指名手配して追いかけてきた
逃げる、逃げ続ける
私は悪いことなどしていない
主義を貫くだけ、この不条理な世界で
ただ一つ、私の本心を大切にしたいだけ
ただ現実は非情だった、体力には限界がある
少し立ち止まる
そう、分かれ道の手前で
行く先には2つ道がある
無慈悲にも追っ手は迫りつつある
一つは追っ手を殺す道、自由になる道
そして浮浪して生き続ける愚者の道
一つは追っ手に媚を売る道、束縛される道
そして改心したフリでココロを隠す盲者の道
もう一つ道がある、全てを諦める道
この世界に絶望し、追っ手に殺される無為論者の道
結果どうなったでしょう
彼は舌を噛みちぎって自殺した
彼はすべての道から外れた、否、選択しなかった
そうココロが先に壊れたのです
なぜなら、3つの道のどれもに、彼は満足しなかったから
自分の理想を押し通す道がなかったから
そしてその理想を押し通す新たに作る道、
第4の道を切り開く体力が彼にはもう残っていなかった
道があるように見えて、ない
見えない袋小路に彼は絶望した
なぜこんな悲しい結末になったのでしょう
なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ
答えは彼の理想を押し通す余地のない不完全な世界にある
彼が大切に残し続けた意思を村から持ち出す行為は
掟などでは到底規定できないほど、尊ばれるものなのに
彼のアイデンティティなのに
世界は彼を許さない、許さない、許さない
では私は世界を許さない、許さない
許してなるものか、希望だけをちらつかせた詐欺師が
到底許されざることだ
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