列車と駅

子供の頃から乗ってきた列車に

今日も乗る、最近乗る気がしないけど

乗るのは規則だからね、だから乗る、意思はもうない


子供頃は気づかなかったけど

大人になるにつれて色々なことがわかる


うるさい電話の音、厄介者の男、疲れた会社員

席を譲らない若者、暴れる子供をあやしながら人目を気にする女性


みんな大変だな、大変を生み出してる人もいる

仕方ないか、、

だって乗る人は選べない、変えれない


でも列車は進み続ける、休息は許されないから、規則だからね

世界から許される担保だから、意思はない


座れないおじいさんのためにも、いつかのために

端っこで立っておくか、スマホでも見て、ココロを無くそう


ふと、スマホも飽きて、車窓から景色を眺める

綺麗な景色だね、田んぼに山、古めかしい民家に

まさに田舎の原風景みたいな感じかな

いい世界だ、だって満員電車で人と接しなくていいから


ふと、視界の先に何か見える

霞んで見える、駅だ

こんなところに駅?今までなかったのに


最近疲れてきたし、降りてみようか

少しは会社に遅れても、少し休憩したっていいんじゃないかな

だから降りた、自分の意思で


心地いい風だ、いい香り、空気が格別に綺麗だ

虫や鳥の囀りも、いつもはうるさいだけなのに

今日は心地よく聞ける

目を閉じてみよう

このまま、寝てしまおうか

いやいやそれはよくない、そこまでしようとは思ってない、許されない


と目を開けてみると

そこには駅はありませんでした


結果どうなったか

彼の元に列車は来ることなく、野垂れ死んでしまいました

携帯の音だけが鳴り響く、世界はそれでも休息を許さない


彼に休息は許されていなかった、

それだけで世界から弾かれてしまったのです


では見えた駅はなんだったのか

彼の心からの願望、そこから生まれた幻想か、

はたまた時には休息が必要だという、世界の嘯きか


自分の意思を押し殺して、彼は疲れた

自分の意思に従って、しかし彼は世界から拒絶された???


なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ


彼にとって必要なことを

彼自身が選んだのに、心からの叫びが否定された


そんなことがあっていいのでしょうか

いいはずがない、いいはずがあっていいわけがない


世界はなぜこうも理不尽なんでしょう

こんなことばかりです、絶望だ


もう少しだけ、彼に優しさをかけられる人間がいたら

ただそれだけでも何か変わったかもしれないのに

彼はおじいさんのために、優しさをかけられる人間だったのに


あんまりだ、気持ち悪い、気色悪い

なぜこんな世界に身を置かなければいけないのか、不思議でならない

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