短編「劇場ノ仮面」(完)

不可世

一話完結

今宵も

リリカルな現状

探せど探せど自分がいない

浮足立った

張りぼての

世間体を意識した

仮初の紳士


あー、嘘は自分まで苦しめる

いっそお縄について

最初から学びたい

って言っても

本気にしないでくれ


俺ときたら

はったりとまやかしで

自尊心を賄ってる

ってはずだったんだ

だが今じゃ、供給が追い付かない


そうさ、

やらかしたんだ

嘘を一度つけば

次は100の嘘を想起することになる

俺は、そのスパイラルに飲まれた

完全に業火に焼かれてる


生きるってのが

もう嫌んなるくらいに

バテバテだ


見通しが甘かった

甘すぎた


もうはやし立てられることはなくなった

人影すらおぼつかない

残ったのは

みすぼらしい

虚栄の心


そう俺自身


あのサーカスのピエロが

仮面の裏でも笑顔だってことに

俺は気づけないほど

浅い人間だった


ああ、俺ときたら

ろくな死に方をしなそうだ


あげく心得もないから

こっから挽回するのも

無理そうだ


ああ、このチェインを

振りほどいてくれ


自身で撒いた種に

囚われてる

がんじがらめだ


もうやりきれそうにない

俺は何も読めない

不適合な粗悪品だ


ちょっくら

出直してくる


仮面をとっても

素敵な俺になって

帰ってくる


じゃ、またの仮面舞踏会で、会おう。


きっとどんな嘘にも負けない

隠しきれないものを持っていくよ


お楽しみに。

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