第5話【深夜に部屋に大量に荷物を送りつけるのは良くないと思う】
仕事を済ませ帰宅すると、リビングが荷物で埋まっていた。
師匠が空間転送便で送ると言っていた荷物が届いたのだろう。
しかし、リビングが埋まるほどとは聞いてないが……。
中身を確認して、保存方法に合わせて仕分けし、保存庫に入れていく。
一見僕には無関係の仕事を押し付けられているようにも見えるが、実はこれがそうでもない。
師匠が買って送ってくれる物の中には露店に出す料理に使う素材も含まれている。
送られてきた物で一番痛みやすい物からいかに効率よく出していけるか。それがうまく儲けを出すポイントでもあった。
「えー、と、この箱は……っつ!! 重ッ!! なんだこれ……」
押しても引いてもびくともしない箱を開けると、中には大小様々な石がみっちりと詰まっていた。
しかも同じような箱が部屋の半分を天井に付くくらいまでびっしりと埋めている。
「え、ここの荷物全部石……?」
戦慄を覚えながら目の前の箱から一つ石を取り出す。
「……まさかこれ、……全部魔石の原石か……?」
思考が追いつかない。
もしこれが師匠から先日魔石細工師になったフラムへの就職祝いだとするならば、親バカにも程がある……。親じゃないけど。
「何やってんだあの人ホントに……」
引き攣る頬を感じながら、石を箱に戻そうとしたときだった。
「あれ……これって……」
親指の爪ほどの小石を拾い上げ、僕は眉根を寄せた。
明らかに魔石の原石とは異なる石だった。
「ふぅん……そういうことか。……ほんと、お人好し過ぎるよ。師匠」
なんとなく。
ホントになんとなくだが、色んな話が僕の中で繋がってきた。
答え合わせは明日。
師匠が夕方ころ戻るのだろう。
粗方の準備を済ませて。
僕の考えが合っているのならば、師匠は大きなショックをこの世界にぶつけようとしているのだ。
それによって、世直しでもしようとしているのかもしれない。……わからんけど。
多分その時には自分も何かしら手伝わされるんだろうな。
そんな予感めいた確信が心の中に芽生え、僕は苦々しくも笑うしか無かった。
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