蛇足
与羽は人間の持つ可能性や想定外の発想、想像力をとても興味深く思っていて、人間が大好き。だから『三つのお願い』を持ちかける時は敢えて言わないが、人間の口にする願いには大きく分けて二種類ある。
具体性のないものと、具体的なもの。「大金持ちになりたい」と「六千億円欲しい」では意味が全く違うのだ。
「大金持ちになりたい」と願った時、叶えられる願いは本人のさじ加減に拠る。人間それぞれがどのくらいのお金を持って「大金持ち」と見做すのかはバラバラだからだ。そこには想像力がある。与羽はそのキャラクタリスティックな解釈と向き合う瞬間が楽しくて仕方がない。だから本当はずるなのかもしれないけれど、その性質を明かさない。
佐羽木未咲は佐羽木美散に会いに行った。ただそれだけのこと。
願いは、叶った。
ミサキという少女の記憶と記録を胸にしまい込み、与羽は歩き出した。また違う誰かと出会い、願いを叶えて世を渡るのかもしれない。その行方は誰にもわからない。
鳥がバサバサと大きな音を立てて木から飛び立つ。咲くことのできなかった桜の蕾が、誰にも見つからずぽとりと落ちた。
ねがいごと 加賀 魅月 @making_your_night
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