第41話 ギルドの現状
「まず、ここに来て最初に思ったことなんだけど…
今日はなんでこんなにも冒険者の数が少ないの?
って言うか、昨日、面接をした人しか居ないですよね?」
「あ、そのことについてなんですが…
今朝、町の東門を出たところにゴブリンの死体が発見されまして…
つまり、魔物の襲撃があったみたいなんですが、誰かが退治してくれたようなんです。
…あの…もしかして…なんですが…?」
「ああ、そのことね。
あの魔物なら、昨日の夜、町に襲いかかろうとしてたみたいだから…
俺たち…というか…アリシアが退治してくれたんだよ」
「やはりそうでしたか…
お手を煩わせてしまい申し訳ございません」
「いや、それは別にいいんだけどね。
この町はオレたちの拠点にするってことになったんだから、襲われちゃ困るしね。
それよりも、なんで見張りとかが誰も居なかったのか?ってことだよね。
一応、その役割はギルドが引き受けているんでしょ?」
「仰る通りです。
ただ、見張りを担当していた冒険者チームがこの町から離れてしまったようで…
私たちもその…スラッシュ様がこちらにやって来られてから少し混乱しておりまして…」
「そこまで考えてる余裕が無かったってことか…
なんか申し訳ない…」
「いえ、今回の件はこちらの管理不足が原因ですので、お気になされる必要などありません」
「そう?
…で、今日からはどうするつもり?
見張り役の穴を埋める冒険者っているの?」
「はい。
そのために、ここに居る冒険者以外は現場を見に行っていますので、死体の処理をしている間、そこで何らかの話し合いがなされるかと…
町の見張り以外にも、担当する者が居なくなった仕事は多いですから」
「なるほど。
でも、そんな上手く仕事なんて割り振れるものなのかなぁ?
やりたい仕事もあれば、やりたくない仕事…っていうか依頼?もあるでしょ。
それに、元々自分達が受け持っていた仕事もあるだろうし」
「仰るとおり、そこが問題なんです…
誰もやりたがらない依頼に対しては報酬を上げるべきかもしれないですし…
それに、現状ギルドが預かっている依頼に対して、人材が不足していますので、訓練学校生をこの町に呼ぶことも検討しないといけないかもしれません…
いずれにしても、私の権限では無理ですので、ギルド長の判断を仰ぐことになるかと…」
「そう!それ!」
「え?!」
「ああ、ごめんね、大きい声出してしまって…
あのさ、ギルドなんだからギルド長っているはずだよねってずっと思ってて、今日はそのことについても聞きたかったんだよ。
オレまだギルド長を見てない気がするんだけど…
まさかとは思うけど、あの時逃げた…とか?」
「いえ、ギルド長は今不在です。
最近発見されたダンジョンの調査をバルデスさん達に依頼して報告を受けた後、そちらに向かっておりますので。
一応の予定ですと、来週あたりには戻ってくるかと…
ただ、この町の噂も耳に入る頃かもしれないので、いつも通り普通に戻ってくるかどうか?はわかりませんが…」
「ああ…それもそっか…」
地味に困ったなぁ…人材不足か…
ん?
闇ギルドのやつらにやらせればいいんじゃね?
エレオノーラ様の命令なら絶対聞くみたいだし…
とりあえず、一回家に戻ったら相談してみよ…
「まぁ、ギルド長が戻ってくるまでは、もしかしたら、こっちでなんとかできるかも…」
「本当ですか?!」
「…いや、あまり期待しないでね。
かも…だよ「かも」!」
う~ん…
そもそもの話、自分たちの拠点なのにいつまでもギルド任せっていう時点で何かがズレてる気がする。
その辺りの対策や制度も考え直さないといけないな…
「とりあえずは、人手が欲しい仕事と人数がわかったら報告して下さい。
あと、もしギルド長がこの町に戻って来るなら、一度会って話をしてみたいし、そういった時間を設けて欲しいかな」
「かしこまりました。
必ずギルド長に時間を作らせます!」
「…あ、うん。
ところでさ、セシリアさんって、どういう立場なの?
受付嬢にしては、結構色んな権限持ってそうだし」
「実はですね…
ここのギルド長って、私の義理の姉なんです。
それを知ってる人はほとんどいませんけどね」
「え?
そうだったの?
それで、結構色々と発言力があったりするんだ…
しかも姉ってことは女性?」
「はい。
歳は結構離れていますけど。
元々勝気な性格で、私がこの町に来て受付や事務処理ができるようになってからは、そういった仕事はほぼ私に丸投げで、隙あらばダンジョンとかに行きたがるような人ですね」
「それはまた…
でも、ダンジョンとかに行ったら魔物とかいるでしょ?
危険だし、心配なんじゃない?」
「確かにそうなんですが、あの人は結構強いですから」
「そっか。
なら益々、会ってみたいと思ってきたよ」
「…他にもご質問はありますか?」
「あるよ。
この前、オレやシルヴィーが殺した冒険者達の死体ってどうしたの?
それに、あれだけ血とか散乱してたのに綺麗になってるし。
そもそも、あの冒険者達の遺族というか、仲間というか…
あいつらを殺したオレに恨みを持ってる人ってどうしてるのかなぁ…って」
「死体処理や清掃に関しては、その日のうちに噂を聞きつけた業者がやって来て処理してくれました。
あと、あれらの冒険者パーティーはガラが悪かったので、寧ろ居なくなって清々している人のほうが多いと思いますので、あまり気にしなくても良いと思いますよ」
「結構、淡泊だね」
「冒険者とはそういうものだという認識です。
いつ死んでもおかしくはないという覚悟を持ってなっている人が大半だと思いますし、私のようなギルド職員を含め周囲もそういった感覚です。
それに、殺されたのは、昼間から依頼も受けずにお金が無くなるまでここでお酒を飲んでるような人達ばかりでしたから」
「ふ~ん、そういう感じなんだ…
ま、いいや。
地味に細かい点で聞きたくなった単語も出てきたけど、まぁそれは置いといて…
今日オレたちがここに来たメインの話なんだけど…」
スラッシュの言葉を聞いたセシリアの表情が引き締まる。
「オレとシルヴィー、2人をギルドの冒険者として登録して欲しいんだけど」
「は?!」
思わず大きな声を出してしまったセシリア。
その失礼さに気付いたのであろう、咄嗟に両手でその口を塞いでいた。
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