第39話 言語と文字
-マルクス邸 食堂-
「…じゃあ、みんなの同意も得られたし、面接の結果は明日ギルドに行って冒険者たちに伝えるということで。
時間は10時で良かったっけ?」
「はい。
彼らにはその時間にはギルドに居るよう伝えておりますので。
…あの、ご主人様。
さっきみんなで選考している時に思い出したのですが、ゴブリンがこちらに向かってくる前に何か言いかけていませんでしたか?
確か…この世界の言葉や文字についてのご質問だったような気がしますが」
「あ!そうそう!それそれ!
アリシアちゃんたち3人はまだわからなくもないけど…
例えばユリアちゃんとかアルファたち、それに今日面接をした冒険者たちが何で日本語を普通に話せるのか?っていう話。
しかも英語とか、和製英語とか…
なんだか文字の読み書きもできるみたいだし…
とにかくオレが前世で日常使っていた言葉や文字が理解できてるって、どういう理由?
やっぱり、この世界がオレの創作物が元になってるから?」
「それは我らにもわからぬ。
我が君よ、リアとやらに聞いてみてはどうじゃ?」
「あ、それもそっか…」
「ちょっと、あんた!
せっかくあたしがこの場に居るんだから、ちょっとくらいはこの世界の住人に聞いてみたらどうなのよ!
………
…じゃなくて…どうですか?」
…うん…ユリア…今ならオレにも君がアリシアちゃんを恐れている理由がわかるよ…
「まぁまぁ…アリシアちゃん。
そんな怖い目で見ないであげて…」
「ですが、ご主人様…」
「ユリアちゃんは転生者じゃないけど、一応はオレの作ったキャラクターで設定に従順なようだし…
こういった喋り方をするって決めたのはオレだから、これからは大目に見てあげてくれない?」
「かしこまりました。
…ですけど、ユリアちゃん。
あまりにも無礼な態度を取った時には…」
「わ…わかってるわよ…」
「…で、ユリアちゃん。
この世界の住人って、どうやって言葉や文字を覚えてるの?
日本語っていえば前にオレがいた世界だと、他の国の人が習得するにはかなりの難易度になってたんだけど。
まぁ、オレみたいに生まれた時から日本語が使われてる場所で生まれ育ってるなら、そういった意味での難易度は無いんだろうけど…」
「あんたの言う通り、言葉は生まれた時から周りがそれを使っているから、難しいものっていう感覚はあまりないわね。
でも、文字については読み書きができる人間ってそんなに多くはないわ。
ただ、ヒューマンだったら大体の人が日常で使うような簡単は文字を理解してるけどね」
「ヒューマンだったら?」
「そうよ。
同じ人間でも教育が行き届いてない獣人なんかの種族の識字率は低いらしいわよ」
「なるほどね。
ちなみにだけど、学校って普通に存在するの?」
「あるのはあるけど、数は少ないわよ。
この国だったら、王都とか大都市にはあるけど、そこに通えるのは基本的にはエリートか金持ちだけね」
「ユリアちゃんは学校に通わないの?」
「前は王都にある学校に通ってたわよ。
でも、そこでちょっと問題を起こしてしまって。
って、それは別にどうでもいい話だったわね。
とにかくそれで、あたしは今ここに居るってわけ。
勉強については、エレノアが家庭教師としてここに来るまで、イルミナに帰らせた従者に教えてもらってたわ」
やっぱり識字率ってそんなに高くはないのかな?
明日ギルドに行くついでに、町全体の様子でも観察してみるとするか…
「それにしても、獣人とか他の種族も同じ言語って都合が良すぎる気がするんだよなぁ」
「我が君よ、その点についてじゃが…
どうやらこの世界に存在する歴史書によると、勇者が魔王を倒した後、世界を統一をした時に公用語になったようじゃぞ」
「ってことは、700年くらい前から日本語が世界中に広まったってことか…
まぁ、それだけの歴史があるなら…
それよりもさ、いくら魔王がいなくなったからって、よく世界統一なんかできたよな…」
「じゃな…我もそこが気になっておる」
「ま、昔の話みたいだし、それを考えるのはまた今度にして…
まだオレの中で疑問が残ってるんだけど。
ユリアちゃん、聞いてもいい?」
「いいわよ」
「じゃあ、面接の時にも使った言葉なんだけど…
呉越同舟って言葉の意味は知ってる」
「何よ、突然ね。
あたしくらいになれば、その意味くらいわかるわ!
敵の敵は味方ってことよ!」
…う~ん…ニュアンスは間違っていないけど、微妙に違うんだよなぁ…
ま、それは今はいっか。
「じゃあ、呉と越ってのは?」
「は?
なんで言葉を区切るわけ?
そんなのに意味なんてないわよ
呉越同舟は呉越同舟よ。
まぁ、同じという意味の漢字と舟という単語が使われてるから、呉と越っていう何かが手を組むってのは、なんとなくわかるけどね」
やっぱり…
昔の地球に、呉や越という国があって、それが元になってできた四字熟語だというのは理解されてないわけか。
ま、なんにせよ、言葉が通じるってのはオレにとっては都合が良いし、特に問題はなさそうだな。
最後にもう1つ、根本的なことを確かめるために質問してみるとするか…
「なるほど。
じゃあ、日本語の日本とか漢字の漢の意味は?
あと英語の英とか」
「さっきから何意味わかんないこと言ってんの?
日本語っていうのは、あたしたちが普通に使ってる言葉じゃない。
あと、漢字は漢字っていう複雑な字体の文字のことで、英語ってのは、なんか独特な発音や文字を持ってる言葉よ。
日本や漢、英に意味なんてないわ」
「よくわかった、ありがとうユリアちゃん」
スラッシュたちはこれらのやり取りを終え、皆で明日の予定について確認した後、彼は寝室に戻りベッドの上に寝転がっていた。
なぁリア。
<お呼びでしょうか、マスター>
さっきの話どう思う?
<魔王討伐後、何者かがこの世界を統一をしたという点についてですね。
普通に考えれば、それだけの力を持った存在。
つまり勇者だと考えられます>
だよな…
やっぱり、そう考えるのが普通か…
小説は最後まで書き上げてなかったけど、オレの中じゃそんな世界統一なんてエンドを迎える予定じゃなかったんだけどな…
それに…
そもそも素人のオレが書いたラノベなんて欠陥だらけのはずだから…
今いるこの世界って、誰かが設定のガバとか、描いてなかった部分を埋めてくれてるような気がしないでもない…
<であれば、それを行ったのは女神様か或いは…ということですね>
なんにせよ、神レベルの力が働いているとしか思えないんだよな。
まぁ、一応この世界はオレが作った小説がベースになってるから、ある意味じゃオレが神みたいなもんだけど…
だけど、設定してない部分とかは一体誰が何のために…
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