第16話 冒険者
!!!
アリシアちゃんとシルヴィーが!!!
男達に囲まれている2人の姿を見て、思わず駆け出そうとするスラッシュ。
だが、それを実行する前に、彼の肩に置かれたエレオノーラの手によって抑えられた。
「まぁまぁ、我が君よ。
一度落ち着くのじゃ…あやつらの会話をよく聞いてみるがよい」
会話???
「アリシアさん、僕と付き合って下さい!」
「おい、おまえ!何抜け駆けして告ってんだよ!アリシアちゃんと付き合うのは俺だっての!」
「あ~?てめぇら、何さっきから俺様より先にアリシアと話しようとしてんだ~?ぶっ殺すぞ!」
「やれるもんなら、やってみな!返り討ちにしてやるよ!」
「ね、僕はこんなすぐに暴力で解決しようとする物騒な人達とは違うんです。だから、この中で付き合うならどう考えても僕が一番だと思うんですよ」
「ヘタレは黙ってな!」
「誰がヘタレだって?そうじゃないことを証明したほうがいいのかな?」
「ホント、毎度毎度騒がしい連中ですよね。まぁ、こんなアホ達は放っておいて、アリシアさん。私と別の場所でお茶でもしながら、2人の将来についてお話しませんか?」
「あ?誰がアホだって?!」
「おい、気障野郎!てめぇこそ弱ぇくせに毎回俺様達の邪魔すんじゃねぇよ!」
「弱い?この私が?脳筋は相変わらず面白くない冗談しか言えないのですね」
なんだこの状況…
アリシアちゃん、モテモテじゃん…
「アリシアー、主が帰ってきたみたいだよー」
「あ!ご主人様~!」
シルヴィーの言葉にすぐに反応するアリシア。
スラッシュのもとまで駆け寄ると、先程エレオノーラがしていたのと同じように彼の腕を両手でギュッと組んだ。
いや…アリシアちゃん。
そうやって腕を組んでくれるのは、すっごく嬉しいんだけどさぁ…
TPOって言葉、知ってるのかなぁ???
男達は口論をやめ、その視線は当然スラッシュへと向けられた。
それらは羨望と敵視が入り混じったようなものにも見える。
「ほんと、貴様らは…
よくもまぁ飽きもせず相変わらずアリシアの尻を追いかけておるみたいじゃのぉ…」
エレオノーラの存在に気付くと、男達は彼女から少し距離を取り警戒する。
彼らのこの反応から察するに、過去に何かがあったのだろう。
「えっと…アリシアちゃん、いつもこんな感じなの?」
「はい、見つかってしまった時には…
いつもだと、騒ぎを聞きつけた聖騎士団がそろそろ彼らを止めに来てくれるんですが…
あ、来ました」
白いフルアーマープレートを身に纏った騎士達が広場に向かってやって来る。
その姿を見て、アリシアに群がっていた男達は、まるで蜘蛛の子を散らすかのように退散。
彼らがいなくなったのを見届けた一人の騎士は、馬から降り被っていたヘルムを取って顔を見せた。
「はぁ…ほんと相変わらず困った人達よねぇ…」
「すみません。
いつもありがとうございます」
「別にアリシアさんが謝ることじゃないわよ。
それにしても、モテ過ぎるっていうのも困りものね…
まぁ、最初にあなたを見かけた頃は、あれだけ異性にモテるってのが、ちょっと羨ましかった時期もあったけど。
…それはそうと…
もしかして、その腕を組んでいる彼が、いつもあなたがよく言ってる大好きな人…なのかしら?」
その言葉を耳にした途端、アリシアの白い頬が赤色に変わっていく。
「アリシアよ」
アリシアと聖騎士の女性が親しげに会話をしている中、エレオノーラが声をかける。
「おっと、済まなかったね。
騒ぎも治まったみたいだし…私達もそろそろ警備に戻るわね」
再びヘルムを装着した女騎士がアリシアにそう告げ騎乗すると、彼女は他の騎士達と共にその場から去って行った。
「ご主人様、お待たせしてしまい申し訳ありません」
「いや、それは別にいいんだけど…」
「アリシアよ…
そなたがヒューマンに興味を抱くのは我が君の創作物の設定上、仕方ないことかもしれぬが…
あやつらはルーデシアの聖騎士じゃ。
必要以上に馴れ合うことは、いずれそなた自身の首を絞めることになるかもしれぬぞ」
「…それはわかってはいるのですが…」
その言葉を最後に、しばらくの間沈黙が続く。
そんな少し重くなった空気を変えたのはスラッシュであった。
「そうだ!
せっかくの異世界なんだから、ギルドに行ってみたい!
当然、冒険者ギルドってあるんだよね?」
「あ、はい…ありますけど…」
「なら行ってみようよ!」
なんとなく重い空気が嫌だったから勢いで言ってみたけれど…
もしかしたら、マジである意味一番気になる場所かも!
異世界と言えば!って感じだもんな~!
あ~、なんだかテンションが上がってきたぞ~!
「クフフ…
我が君はそういった行動に出るのか…
これは興味深いのぅ」
「ん?
エレオノーラ様、今何か言った?」
「いや、大したことではない。
独り言じゃ」
中央にある広場から、それほど距離のない場所に彼らの目的地の建物はあった。
「あの、ご主人様…
本当に中に入られるのですか?」
「え?なんで?
もちろん入ってみるつもりだけど。
せっかく、ここまで来たしね」
と、アリシアに返答しながら、その手はギルドの扉に手をかけていた。
ドアを開くと、その場から中の様子をグルっと一通り見回すスラッシュ。
「あ!!!」
彼は先程までアリシアに絡んでいた男達と目が合ってしまい思わず声を上げていた。
そりゃそうだよな~
しまったなぁ~
なんで気付かなかったんだろ…
普通に町の中にいて、ガタイが良くて武装してる男達なんて、この世界じゃ十中八九、冒険者に決まってんだろ!
ちょっと考えりゃ、すぐわかることなのに、変なテンションのせいで全然そっちに気が回らなかったよ…
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