第14話 強者の実力
-1年前 大精霊の森-
「…というわけなんです」
「はぁ…そのような馬鹿げた話を私達に信じろとでも?」
「…やっぱり、そうなりますよねぇ…」
アリシアは自分たちが異世界からこちらに来た存在であり、女神のような光から今抱えている赤ん坊を預かったこと。
そして、自分が暮らしていた家に戻りたいということを、ダークエルフの隊長らしき女性に正直に話した。
「まぁ、当人である我らでも信じられんようなことが起こっておるのじゃ、仕方あるまい。
そなたの住処とやらに行くのは諦めて、ヒューマンの町にでも行ったほうが良いのではないか?
そもそも、このような森の中にある村だと生活していくのに何かと不便そうじゃからのぅ」
「確かに…言われてみればそうかもしれないですね。
ですけど、エレノアさん。
エルフとヒューマンは対立してるって話もありましたし…大丈夫なんですか?」
「そのホワイトエルフの言う通りだ。
お前たちがヒューマンのところに行くのは勝手だが、彼女だけはこちらで引き取らせてもらうぞ。
人質にされては面倒だからな」
ダークエルフの女性は、エレオノーラとシルヴィーにそう告げると、アリシアの腕を掴んだ。
アリシアはその手を振りほどこうとするが、その握力が強いためか?少し痛がっているようにも見える。
「それはできぬ相談じゃな。
…それと…
まだ我の機嫌が損なわれておらぬうちに、その手を離したほうが身のためじゃぞ、小娘よ」
「まさか、ヒューマンの小娘ごときに「小娘」などと呼ばれる日が来るとはな。
エルフは長寿の種族、こう見えて私は300年以上も生きているのだ。
年上は敬うべきだと教わらなかったのか?」
「クフフ…
クフフフフ…
その言葉、そっくりそのまま返そうではないか。
相手の力量も見定めぬまま、その見た目だけで判断し浮かれている若輩者よ」
ダークエルフにそう告げたエレオノーラの瞳が紅く光る。
「!!!
…ヴァンパイア…!」
ヒューマンだと思っていた存在が魔族だと判明すると、これまで陰に隠れていたダークエルフ達が姿を現し皆攻撃態勢に入る。
と同時に、エレオノーラの全身を包むかのように黒いオーラらしきものが発生した。
「全員退け!!!
今すぐにだ!!!」
ダークエルフの女は掴んでいたアリシアの腕から手を放し、そう叫ぶと一目散に森の奥のほうへ逃走する。
「しかし、隊長!」
「やかましい!!!
つべこべ言ってる暇があったら逃げろ!!!
何があっても絶対にこちらからは攻撃するなよ!!!」
その声が聞こえてから程なくして、アリシアたちの周囲からダークエルフ達はいなくなった。
「クフフ…
ほんのちょっとだけ実力を見せてやっただけじゃと言うのに…
若者はカワイイのぅ」
………
……
…
「私達を追って来てはいないようだな…
ここまで来れば、もう大丈夫だろう…]
全力でエレオノーラから逃げてきたダークエルフ達。
隊長と副隊長らしき者以外は皆相当疲れている様子で、先程の場所からかなり離れた場所まで来ると彼女達は休息を取る。
「あの…少しよろしいですか、隊長」
「どうした?
何か問題でもあったのか?」
「いえ、そうではないのですが…
あの…
なぜヴァンパイア1人相手に私達が逃げないといけなかったのでしょうか?
こちらの戦力は十分あったはず…
それに…
お言葉ですが、この森の中で魔族を自由にさせてる方がよろしくないのでは?」
部下の問いに対して、一呼吸を置いてからダークエルフの隊長が答える。
「森の警備に当たっているお前達は皆まだ若いから、わからないんだろうが…」
「そんなに恐ろしい相手だったのですか?」
「ああ。
あれは普通のヴァンパイアじゃない。
まず、こんな昼間に外で行動している時点で真祖クラスであることは確定だろうな。
それに…あの視認できるほどの強大な魔力…」
「え?
魔力って見えるものなんですか?
もしかして、さっきの黒いオーラみたいなのが、そうなんですか?」
「そうだ。
普通は見えるものではないのだがな…
ただ、あまりにも強力過ぎる魔力は濃度が濃いためか、あのようにして見えるのだ。
それに、あいつは莫大な量の魔力を自分の意のままにコントロールしているようにも見えた…
しかも、余裕の表情でだぞ…」
「…それって…もの凄く危険な相手だったんじゃ…」
「ああ…
あれは化物の中の化物だ…
フリーデンの精鋭達全員が束になって挑んでも勝てるかどうか…のな…」
「そんな化物がこの森にいるなんて…
これって非常事態じゃないですか!!!」
「その通りだ。
全員すぐに動けるようにしておけ。
準備が整い次第、国王にこの事態を報告するため王宮に向かうぞ」
隊長がその命令を出してから10分後には、そこにダークエルフ達の姿はなかった。
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