第1章 世界の管理者

第6話 復活

洋館の中にある一室。

おそらくは寝室なのであろう。

大きなベッドに腰かけている男の前には3人の女性が立っていた。



「オレの名前はスラッシュ。

前にいた世界では死んでしまったらしいんだが、また新しく生を受けたようで、若返った上にイケメンの姿でさっきこの世界で目覚めた。

ちなみにだけど、前世での記憶が残っているから、これって、いわゆる異世界転生ってやつだろう。

しかも、どうやらオレはこの世界を管理しなきゃいけない立場にあるみたいだ。

もちろん、それ相応の力を女神様から与えられ、有難いことにリアという頼りになるサポート役まで付けてくれた。

さて、期待と不安が入り混じる中、オレの新たな人生はこれからどうなっていくんだろうか」


という、一昔前にはありがちだったような…

アニメの2話とか3話くらいまでの冒頭にありそうな…

そんなベタというか、素人感がある異世界作品で、主人公が語りそうなセリフが頭の中で聞こえたような気がした。

って、現実逃避してる場合じゃないな…


「あの、ご主人様。

さっきからずっと黙ってらっしゃいますが…

どうかされたのですか?」


「あ、ごめんね、アリシアちゃん。

なんでもないよ。

ちょっと考え事を…」


う~ん…

さっきから2人とも黙ってオレが何か喋るのを待ってるようだけど、いったい何を話せばいいんだよ?

あまりにも考えすぎて、さっきは思わずトリップしちゃったよ!

にしても、アリシアちゃんの時は向こうから話しかけてきてくれたから楽だったけど…

「初めまして、こんにちわ」ってのも変だしなぁ。

てか、フィギュアだったアリシアちゃんがリアルなエルフの体に変化したのを考えると…

この2人、どう考えてもシルヴィーとエレオノーラ様だよなぁ…


「えっと…

シルヴィーとエレオノーラ様…でいいんだよね?」


「わぁ!

ホントにあるじだ~!

ボクのこと覚えててくれたんだねー!」


「なるほど。

我のことを真名で呼び「様付け」するところをみると、以前の世界にいた我が君と同一人物で間違いないようじゃのぅ」


「だから、ご主人様はご主人様だって、私、何回も言ったじゃないですか~」



スラッシュが会話を切り出したことで、張り詰めていた空気が一変し、場は和やかな雰囲気となる。



「それはそうと、我が君よ。

もう目覚めたのであれば、その格好はどうかと思うぞ。

それに腹も減っているのではないか?」


「あ、確かに。

そう言われてみれば」


「であれば、今から我が眷属に料理を作らせるゆえ、着替えが終われば食堂に来られるがよい。

これからの話もしておきたいしのぅ」


「え!ごはん!

ねぇ、エレノア!

今日のお昼は何?」


「そうじゃのぅ…

せっかくなので、以前、我が君が好きだった肉料理にでもしようかのぅ」



エレオノーラは、Tシャツに短パンのような服を着ていたスラッシュに一礼をした後、シルヴィーと軽くそんな会話をすると寝室から出て行った。



「では、ご主人様。

お着替えをさせて頂きますね」


「あー!

アリシアだけずるいー!

ボクも手伝うー!」


「いやいやいや!

自分で着替えるから!」



スラッシュはアリシアとシルヴィーにそう告げると、部屋から追い出す。

彼が着替え終えた後、寝室のドアを開けると、そこには彼女たちの姿があった。

さすがに料理が出来上がるまでには、まだ時間があるということで、廊下で待機していた2人は彼に館の中を案内する。



にしても、立派な家だなぁ…

まるで高級ホテルじゃん…

これぞ中世ヨーロッパ風異世界のお屋敷って感じだな。



前世ではアパート暮らしであった彼のテンションが上がる。

ただでさえ広い上に、珍しいものや初めて目にするものもあったので、自然と彼女たちとの会話も弾む。

そして、そんなこんなをしているうちに程よく時間も経過していたようで、彼らは食堂へと向かった。

扉を開けると同時に、食欲をそそる匂いが彼らの鼻孔をくすぐる。



まさかのビュッフェスタイルだったとは…

てっきり、フランス料理的なものだと思って、ちょっとテーブルマナー的なのが不安だったんだよね。

これは助かる。

心置きなく、目一杯、満腹になるまで食べることができそうだな。



「今日は我が君が復活されためでたき日じゃからのぅ。

かなり豪勢にしておいたぞ」


きっと彼女の言う通り今日の昼食は特別なのだろう。

それは、シルヴィーの満面の笑みを見ればわかる。

まぁ、逆に普段がどんな食事をしているのか?が気になるところではあるけど…



食堂にいたエレオノーラ様を加えた3人はスラッシュの復活を盛大に祝う。

そして、彼ら4人はその豪勢な食事を心ゆくまで堪能した。

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