第4話 スキル発動
え?!誰?!
このイケメン!
ってオレか…
鏡の前に立ち、自分の姿に酔いしれる男。
だが、彼はナルシストというわけではない。
中年男性だった彼の外見が、若返った上に美青年へと変貌していたのだから、こういった反応を示すのは当然のことだろう。
「あの、ご主人様。
もう完全にお目覚めになられているご様子なので、あとの2人をこちらのお部屋まで連れて来てもよろしいでしょうか?」
そう言えば、アリシアちゃんの他にもあと2人いるって言っていたな。
「ああ、それもそうだね。
じゃあ、頼むよ」
「かしこまりました。
では、一旦、失礼致します」
アリシアは男に一礼をすると、この部屋から出ていった。
それにしても…
これって本当に夢なのか?
正直、目覚めてからのアリシアちゃんとの会話やその内容を全て鵜呑みにしているわけじゃない。
普通に考えれば、あまりにも現実離れしているからな。
だけど、この五感があまりにもはっきりと機能しているという状況はとても夢の中だとは思えないんだよな…
<今、マスターが考えていた通り、ここは夢の中ではありません>
え?何?
男は突然飛び込んできた声に反応し、部屋の中を見回す。
が、どこにもその声の主らしき姿は見当たらなかった。
<いくら探しても見つかりませんよ。
私はマスターの中に存在しておりますので>
マスターって、オレのことか?
…たしかに…
何も喋っていなかったのに、頭の中で考えていたことに対して反応してきたものな。
で、お前は何者なんだ?
<私は女神様によって、マスターを補佐するために創造された存在です>
また女神か…
アリシアちゃんの言ってたこともそうだけど、言ってる意味がさっぱりわからないんだよな。
<ずっと様子を窺っていましたが、そういう状況であろうと判断し、マスターを補佐するため今回はこちらから話しかけてみたのです>
それで?
<現状、前世の記憶しか持たないマスターが理解しやすいように説明するとなると、ここは異世界ということになります>
異世界…ねぇ。
ラノベの中でも特に異世界ものは好きだったけど。
つまり、地球で生きていたオレ…あれ?…オレの名前ってなんて言うんだったっけ…
まぁ、いいや。
とにかくオレは死んでしまって、この異世界に転生したってことか?
<その通りです>
じゃあ、さっきアリシアちゃんが言ってたことは全部事実だったってことか?
<全て、ではありませんが、概ねそうなります>
マジか…
でも、仮に百歩譲ってそうだったとしてもだ…
どういう理屈でこんな状況になるのか?が全く理解できないんだが。
<神の御業は神のみぞ知るといったところでしょう。
物理法則や時間軸などの森羅万象、ありとあらゆる事象は神の力の前では無意味。
常識の範疇で知り得ることはできないと判断しています>
神ってのは何でもありだな…
<同意します。
ですが、マスターにもその理不尽とも思える力の一端が備わっているのです>
は?
何言ってるんだよ、オレにそんな力なんてあるわけないじゃん。
<そんなことはありません。
マスターには、この世界でマスターだけにしか与えられていないスキルを持っています。
声に出して「アドミニストレーター」と言ってみて下さい>
もしかして、いわゆるユニークスキルってやつか…
「アドミニストレーター」
男がその単語を呟くと、テレビやモニターといった類のものが何もなかった部屋の空間に薄っすらと透明がかった映像が投影された。
おお!
これって、よくVRMMORPG系のアニメとかでよく見かけるやつじゃないか!
実際だと、こんな感じに映るんだな。
意外とちょっと見えにくい…
<色の濃さは設定できますので、少し濃くしてみます。
こちらでどうでしょうか?>
そんなこともできるんだな。
お陰でさっきよりも、かなり見えやすくなったよ。
…で、何か書いてあるぞ…
<初めてスキルを発動しましたので、初期設定を行います。
まずはマスターの名前を入力して下さい>
名前?
えーっと、オレの名前は…
あれ?なんだ?
さっきもそうだったけど、自分の名前が全然思い出せないぞ!
<前世でのマスターの名は記憶から完全に消去されております>
どういう理由で?
<残念ですが、その質問には答えることができません。
情報開示するためには、マスターのクラスが創造神である必要があります>
ん?
クラスと創造神とか…
さっきから思ってたけど、ここはゲームの中の世界なのか?
<そうではありません。
ただ、そういった要素もあるというのは事実です。
前世でのマスターは小説やゲームなども創作していたので、そういった要素もこの世界には組み込まれているのです>
てことは…
つまり、今いるこの異世界は、オレが作っていたラノベやゲームとかを元にして創られた世界だってことか?
<ご名答です>
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