第2話 アリシア・ブレーデフェルト
ああ…良い匂いがする…
シャンプー?香水?
まぁ、どっちでもいいか…
癒される~
…それはそうと、女の子に抱きつかれるなんて、いったい何年ぶりなんだろう…
サラッとした艶のあるブロンドのストレートヘア。
そこから漂ってくる心地よい香りを男は堪能しているようだ。
このような状況下、若い頃の彼であれば、己の欲に身を任せそのままアリシアを押し倒していたであろう。
だが、今回そうはならなかった。
っと危ない…
今は女の子とイチャイチャしている場合じゃないだろ!
とにかく現状を把握しないと…
「あの、スキンシップをとってくれるのは、こちらとしても凄く嬉しいんですが…
とりあえずは、今の状況を把握しておきたいんです。
…じゃないと、なんだか落ち着かなくて…」
「あ…
私、またやってしまいましたね…
申し訳ありません。
こうしてご主人様とコミュニケーションをとることができる日が来るなんて、夢にも思っていませんでしたので…
つい、はしゃぎ過ぎてしまいました」
アリシアはそう言うと男から離れ、ベッドの傍らにある椅子に腰かけた。
「あの、ご主人様。
実は私も詳しいことや、難しいことはよくわかっていないのですが、それでもよろしいでしょうか?」
「ええ、十分です。
それで、その…
あなたは本当にアリシアちゃん…ではなくて、アリシア・ブレーデフェルトなのでしょうか?
確かに、綺麗なブロンドのストレートをしていますし、そのエルフ耳やメイド服のデザインもオレが知っているアリシアちゃんそのものって感じはしますけど…
ただ…例えば何と言うか…耳とかに特殊メイクを施したコスプレをしてるとか…
何だかそんな感じがするんです。
だって、オレの知っているアリシアちゃんは、こんなにリアルじゃなかったので。
まずは、その辺りの説明をお願いしたいんですが…
あ、もし気を悪くしたなら、ごめんなさい」
「いえ、ご主人様がそう思われるのは当然だと思います。
本人である私でさえ、未だに信じられませんからね」
【アリシア・ブレーデフェルト】
エルフ族。
魔法を得意とする金髪の美少女。
長寿の種族であるが、彼女の場合は見た目通りの若さである。
比較的大人しそうな見た目をしているが、実は結構、行動力がある。
トラキア大陸の北西部にあるエルフの国、フリーデン王国領内にある大精霊の森で生活をしていたが、ある日、森の中を歩いていた主人公を目撃して以降、ヒューマンに興味を持つ。
そして、18歳を迎えた彼女は、王国と同盟関係にあるヒューマンの国へと移住し、そこでメイドとして貴族の屋敷で働きながら充実した日々を過ごしていた。
ちなみに、訳あって本人も知らないことなのだが、実はフリーデン王国の第二王女である。
というのが、彼が設定した彼女のキャラクターの概要である。
この男、ある日を境に、いわゆる「オタク」となった。
最初はアニメ鑑賞にのめり込んでいたのだが、それだけでは満足できなかったらしい。
原作である小説を読み始めると、そこから様々なラノベを読み漁るようになり、好きな作品のグッズなども集めた。
そして、数年後には自らでラノベを執筆するようになり、自作小説を元にイラストやゲーム、キャラクターのフィギュアまで作成するようになる。
そんな日々を何年も過ごしていた彼である。
実は元々手先が器用であったのかもしれないが、あまり発想力を必要としないフィギュア作成の腕は著しく成長していった。
本人も完成したフィギュアに満足していたようで、宝物を扱うかのように自室にケースを配置し丁重に扱っていた。
「いやいや!
確かに、人形には魂が宿るっていう迷信はあるけどさぁ~」
アリシアからの簡単な説明を受けた男がそう返す。
「私だって信じられないですけど、これは紛れもない事実なんです」
「って言われてもねぇ…
じゃあ、何か証明できることってある?
何でもいいよ」
「証明?…ですか?
…そうですねぇ~
あ!
じゃあ、ご主人様がパソコンに保存していらっしゃるエッチな画像がどこにあるか?を当てるというのはどうでしょうか?」
「いや、ちょっと何言ってるのかわからないんですけど…」
「確か~
デスクトップにある「書類」のフォルダを開いて~
その中にある「社外秘」というフォルダを開けると~」
「オレは君を正真正銘のアリシアちゃんだと認めるよ!」
「ありがとうございます!ご主人様!」
男はアリシアの言葉を遮るように彼女という存在を認める旨を宣言した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます