009

 冥界で要職を決めて、顔見せを兼ねて天界に戻った俺。ユピテエル城の一室に設けた転送印に出る。


「ここが天界、ですか?お城の中みたいですね……」


 きょろきょろするパメラ。外が見たかったのか?あとで誰かに案内させてやるから、ちょっと待ってくれ。


「お帰りなさいませカイト様。思ったよりもお早いお着きで」


 出迎えたのはエクレフスのババァ。こいつもナイスタイミングだな?


闇妖精ダーク・エルフ……?天界に?なぜ?」


「何故と言われても、俺が頼んできて貰ったからだ。おうババァ、こいつ冥界御三家のカール・フレーリヒってオッサンだ。オッサン、このババァは闇妖精ダーク・エルフの長だったエクレフス・アテルってババァだ」


「先ほどからババァと沢山言われておりますが、いかにも、闇妖精ダーク・エルフ長、エクレフス・アテル。カイト様の命により総務大臣職を務めさせて戴いております。冥界の方々、これから宜しくお願い申し上げます」


 ババァ、深々と辞儀をする。俺の教育の賜物だな、この礼儀作法は。


「あ、あの……」


「なんでしょうかの?死神のお嬢様」


「は、はい。私はハイデマリー・ミューラーと申します。カイト様の命により冥王様のお付きとなりました。以後お見知りおきを」


 ハイデマリーも結構綺麗なお辞儀をかました。俺の教育云々。


「そ、それで質問に戻らさせて戴きますが、と言う事は、今は長ではないのですか?」


「左様です。長は孫娘に譲りましたわ。意外とこの職務、激務なので、兼務は無理と判断しましてな」


「そうは言ってもニフスも天界に入り浸りなんだろ。インフラ技術の仕事頼んじゃったし」


「ニフスはまだ若いですから大丈夫ですじゃ」


 カラカラ笑うババァ。そんな事よりも、ちょっと頼みを聞いてくれ。


「悪いが要職全員会議室に呼んでくれ。こいつ等を紹介したい。特にこの俺の腕にしがみ付いている女を」


 腕を振り回しても離れねーんだこいつは。邪魔で邪魔でしょうがないってのに。


「は。しかと。ですが、お嬢様は何と仰られるか……」


「セレスの心配はいらん。勿論こいつの心配もいらん。何かあったらアイアンクローで折檻するから」


 途端に腕を離したルシフ。若干青い顔になっていた。


「冥界でも大分暴れたようですの」


「そうでもない。と、思う。多分……」


 自信が無いから最後小声になっちゃったよ。


「あ、ロッティにお茶とお茶菓子くれと言ってくれ。あと、話が終わったら厨房を使うとも言ってくれ」


「御意」


 ババァ、深く辞儀をして去って行く。パメラが両膝をガクンと床に付けた


「まさか闇妖精ダーク・エルフが天界にいるなんて……」


 若干ながら震えてもいた。あのババァにそんなに怯えなくても良かろうものだが。

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