010

「まあ、無理もねえ。闇妖精ダーク・エルフは他の亜人に比べて霊力がずば抜けているし、文字通り闇に近いからな。恐れる亜人の方が多いんだ」


 ステファンジジィがしょうがないと頷く。だが、ババァじゃん?


「ババァにビビる必要はないだろ。俺が頼んできて貰ったババァなんだし」


「多分、カイト様だけです。元とは言え闇妖精ダーク・エルフの長をババァ呼ばわりするのは……」


 慄くパメラにステファンジジィがすかさずフォローを入れた。


「俺なんてジジィ呼ばわりだぜ嬢ちゃん。カイト様にとっちゃ、俺達なんてあんまり差はねえのさ。何つうかな、一律仲間、身内、そんな感じだ。特別はルシフ様と天界のお嬢様くらいだろうぜ」


 ステファンジジィは実に俺の事をよく解っているな。その通りだ、お前等はみんな同じだ。俺の頼りになる仲間だよ。


「ははは。カイト様は俺の眼光スレットにも反応しませんでしたし、実の所、天使も死神も恐れていないでしょう。よって闇妖精ダーク・エルフにも恐れないと言う事です」


「お前の言う通りだがな、カールよ…お前如きに恐れる奴なんざいねえってんだ。自惚れんなよクソガキ」


「お前もいちいち怒るなよ。カールのオッサン項垂れちゃったじゃねーかよ。これから顔見せだってのに……」


 しょぼんとした顔のオッサンを冥界の要職だと紹介すんのかよ。それこそ冥界が舐められんだろ。


「まあいいや、会議室に行くぞ。着いて来い」


 ぞろぞろ引き連れて会議室に向かう。最上階にほど近い場所だったような気がするが、途中で誰かとっ捕まえて案内させりゃいいだろ。


「……なんかおかしいな…古くて趣があるが、最近建てられたばかりの様な感じがする……」


 おお、流石だヒルデガルド。俺とセレスがぶっ壊したので、本物の城はもう無いんだ。これは俺が構築した、限りなく本物に近いレプリカのようなもんだ。


「……カイト様、今ラインハルトから念話が入りまして、息子も会議室に向かうそうです」


「そうか。んじゃラインハルトに丸投げするか」


「なにをですか?」


「お前等の紹介」


 言ったら全員ガクッとした。違うだろ、と言った塩梅で。


「カイト様が要職をお決めになったんですから、カイト様から紹介して戴くのが筋ではないのですか?」


「正論を吐くなゲッツのオッサン。反論が全くできなくて困る」


「ならばやはりカイト様から紹介して戴くのがいいかと、因みに、ユピテエルの要職の方々の紹介も当然ながらカイト様が行うのですぞ」


「解った解った、お堅いなぁ…それだからこそお前に幹事長頼んたんだけどな」


「早速期待に応えられて良かったです」


 巧い具合に返しやがったな。まあ、遊び心もあると解釈してやろう。

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