008

 つか、本気で邪魔だから言っちゃおう。


「注文しない客は客に非ず。営業妨害する迷惑な奴でしかない。注文しないのならとっとと失せろ!!」


「カイト、私は塩バターコーンで。あと、海苔のトッピングをお願いします」


「……旦那様、濃厚焦がし醤油のチャーシューメンを。刻み玉ねぎのトッピングをお願いします」


「あえ?お、おう……」


 注文しやがったので肩透かしを食らった。いつものように、席の奪い合いからの追い出しのパターンかと……


「食べ終わるまで休戦ですよ根暗女」


「……そこは賛同します。追い出されるよりも遥かにマシですから」


 仲良く…って訳じゃないが、俺の正面のカウンター席に陣取る二人。


「つか、誰も味噌頼まないんだよな……」


 ぶちぶち言いながらラーメンを作る俺。テーブルを拭いていたルルが乗っかって来た。


「あれはちょっとしょっぱいにゃ。私はあんまり好みじゃにゃいにゃ。煮干し出汁の醤油ラーメンが一番かにゃ」


 まあ……そうかもしれないが、食べるとうまいのは知ってんだろ?


「何を言ってんですか泥棒猫。塩ラーメンこそ至高!あの澄んだスープに勝るもの無し!ですよ」


「……醤油ラーメンが一番。黒いし。背油とチャーシューが一番合うのも醤油ラーメン」


 またバチバチとガンをくれあう二人。


 まあいいや、テーブル席のラーメン出来たから。


「はい、ネギ塩2つ、ネギ醤油2つ。餃子と唐揚げはちょっと待って」


「はいにゃー。おまたせにゃん」


 ルルが運ぶと、早速フォークを持つ四人。


「あなた達はまだフォークを使っているんですか?」


「……そこも性悪女と同意です。ラーメンは箸でなければ」


 いいんだよ、好きなように食べれば。


 マルコがメンマをヒルデガルドのどんぶりに運ぶ。ほぼ同時にヒルデガルドが海苔をマルコのどんぶりに運んだ。


「お前達は仲がいいのか悪いのか解らないな」


 呆れるルークス。トレードは残されるよりもよっぽどいいので、俺は何も言わん。それは兎も角、ギョーザと唐揚げももうすぐできるぞ。ちゃんと食べろよな。残すなよ勿体ないから。


「仲は悪いでしょ。初顔合わせがどうだったか、思い出したくもないわ」


 そうだったな。んじゃ、冥界から帰って来た後がどうなったか、ちょっと思い出してみようか。所謂回想シーンだ。

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