霊峰に生きる雷鳥

 はるかはるか、遠い世界。

 その世界には、独自の生態を持つ鳥たちが生きていた。

 見渡す限りの白き雲海、照り付ける太陽、吹きすさぶ烈風。

 山肌は荒く、山頂には常に暗雲が立ち込める霊峰に、その鳥たちは棲んでいる。

 "レイフォーゲル"と呼ばれる彼らの特徴は、体内にある発電器官によって大きな身体を活動させ、その体表に紫電を走らせている点だ。雄大な大自然の中で生存競争に勝ち残ったのは、この環境に適合した身体を備えていたからだと言える。

 今回はそのレイフォーゲルの秘められた生態に迫るとしよう。


 穏やかに山間やまあいを飛行するのは、歌雷鳥からいちょうトゥオーノ。

丸みを帯びた身体に青い羽毛を持つトゥオーノは鳴き声が特徴的で、その声は鈴の音のようにころころとして美しい。まさに歌雷鳥の名に偽りなし、といったところである。ちなみに、この鳴き声は求愛行動にも使われ、美声なトゥオーノほど異性からよくモテるそうだ。

 大空を群れで飛び回っているのは、百雷鳥びゃくらいちょうレビン。

 鋭利なフォルムに橙色の羽毛を持つ非常に小さなレイフォーゲルで、その大きさは手のひらに乗せられるほど。彼らは群れで行動することが基本であり、外敵が来た際は群れ全体で協力して追い払うなど、その連携力は目を見張るものがある。また、群れにはリーダーがいるようで、リーダーにはギザギザとした鶏冠とさかがついているのが特徴だ。


 今度は地上を見てみよう。

 空中に比べれば数は少ないが、ここでもレイフォーゲルの姿が確認できる。

 土煙を上げて大地を疾走する二頭の走雷鳥そうらいちょうランポ。

 これは速さ比べなどではなく、縄張りを守るための巡回に近い。黒い体毛と長い脚が特徴的な彼らは、飛行能力と引き換えに圧倒的な脚力を有しており、このように縄張りを全力疾走することで、自分たちの土地に危険が迫っていないかを見回るのだ。

 一方、その隣の湖でのんびりと水面を漂っているのは、清雷鳥せいらいちょうイメル。

 なんとも美しい白き羽毛に包まれ、毎日を優雅に過ごすイメルたち。一見、争いとは無縁と思われるほどのたおやかさを持つが、狩りの際には身体に紫電を纏わせて体当たりを行うなど、アグレッシブな面も見せる。

 現在確認されているレイフォーゲルの中で、彼らのように地上や水上を活動領域としているものは非常に珍しい。


 最後に山頂を見てみよう。

 常に雷雲に覆われており、レイフォーゲルたちが生きるこの霊峰において、最も過酷な場所。それがこの山頂である。

 ここでは、レイフォーゲルのボスを争う大型種がにらみを利かせている。

 それが迅雷鳥じんらいちょうドゥークと轟雷鳥ごうらいちょうグローザだ。

 緑色の鮮やかな羽毛に覆われているドゥークは、他のレイフォーゲルとは比べ物にならないほどの巨躯を持ち、翼を広げたその全幅は中型の航空機を彷彿とさせる。

 一方、鮮烈な印象を与える赤き羽根を持つグローザも、ドゥークに負けず劣らずの体躯を持つ。彼らはいずれも、体内で生成された電気を帯電するだけでなく、それを身体の一か所に集めて波動状に放出させる力を持っており、そのパワーは他のレイフォーゲルを凌駕するほどだ。ライバルのような関係性の二体だが、外敵の侵入を察知した際は、己のテリトリーを守るために協力して全力で戦う。それがボスたる彼らの役目であり、義務なのだ。


 このように、レイフォーゲルは各々の特性を活かしながら、過酷な霊峰の地で生き続けている。ここに記したレイフォーゲルたちは、全体のごく一部に過ぎない。この霊峰では、未だ数多くの鳥たちが雄大なる大自然と共に生きている。

 語りきれなかった種については、また別の機会にお話しするとしよう。

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