第18話 ユートVSルリシア(1)
「それなら僕を試してもらえませんか?」
「試す? どういうこと?」
「ルリシアさんは腕に自信があるんですよね?」
「そうね。幼い頃から何かあった時に自衛出来るよう言われていたから、毎日の鍛練はかかしてないわよ。ジョブだって⋯⋯」
「ルリシア様。それ以上は⋯⋯」
「コホンッ! 私の正体がバレちゃうからジョブは秘密ね」
ジョブで正体がバレる?
う~ん⋯⋯今の答えでルリシアさんの正体がわかってしまった。とりあえず今は触れない方が良さそうだな。
「え~と⋯⋯時間を決めてルリシアさんが僕を倒せれば、ルリシアさんの勝ちで。倒すことが出来なかったら、僕の勝ちっていうのはどうでしょうか」
「おもしろそうね。その勝負、受けて立つわ。ボルゲーノもそれでいいわね?」
しかしボルゲーノさんは、やれやれっといった様子でため息をつく。
「ダメですと言いたい所ですが、ルリシア様は一度言い出したら、私の言うことを聞いてくれませんから」
「そんなことないわよ。今朝嫌いなニンジンも食べたじゃない」
それはまたちょっと違うような。やはりルリシアさんは少しずれているのだろうか。
「⋯⋯ルールは私が決めてもよろしいですか?」
俺とルリシアさんは頷く。
「この屋敷の敷地内で行うこと。時間は今から二十四時としましましょう。それと大怪我を負わせる行動はしないこと。ルリシア様が屋敷の外に行く時は、必ず誰か一緒に行くこと。これでどうでしょうか?」
「異論はありません」
「僕も大丈夫です。だけどすみませんが、今日は家に帰らないことを僕の家に伝えてもらえませんか?」
「わかった。そちらは私が手配しておこう」
「ありがとうございます」
良かった。さすがに何も言わずに家に帰らなかったら、心配をかけてしまう。セリカさんが俺を探しに行く姿が目に浮かぶな。
「ふふ⋯⋯ユートくん。今夜は寝かさないよ」
これは夜、俺に奇襲攻撃をしてくるという予告だろうか。
その台詞、別のシチュエーションで聞いてみたいものだ。
だけど残念ながら俺に
「だけど夜更かしは身体に悪いから、その前に終わらせてあげるね」
ルリシアさんは言葉を言い終えると、突然俺の肩に向かって右手を突き出してきた。
だが既に俺はルリシアさんの一挙手一投足に注視していたので、その攻撃は食らわない。
もちろんルリシアさんの攻撃を見切っていたこともあるが、俺には
時が止まり、古文書が自動で出現する。動ける範囲は狭いし、攻撃することも出来ないけど、ルリシアさんがやろうとしていることが丸見えだ。
カードの力を使うつもりはないけど、ゼロ枚になると死んでしまうので、俺は最後のページに入っている四枚のカードを引き、最初のページにセットする。
すると時が動き始めたので、向かって来たルリシアさんの手を掴み、そのままの勢いで一本背負いで投げる。
普通ならこのまま床に叩きつけるけど、ルリシアさんは敵ではないので、床に着く前に止めた。
「うそ! 完全に隙をついたと思ってたのに」
残念だけど
「これで僕のことを認めてくれますか?」
「まだ勝負は始まったばかりよ」
これで認めてくれれば楽だったのに。
俺は床に投げ飛ばしたルリシアさんを引き上げた。
「ありがとう。次こそユートくんから一本取ってみせるから」
そう宣言するとルリシアさんは応接室から出ていってしまった。
何か作戦を立てるつもりなのか、それとも俺の警戒心が緩んだ所を襲ってくるのか。
まあどんな攻撃が来ようと、必ず凌いでルリシアさんの護衛になってみせる。
「ユート、今の動き見事だったぞ」
「ありがとうございます」
「ガーランドの奇襲攻撃もかわしたと聞いていたので、問題ないと思っていたが⋯⋯お前を護衛に推薦して良かったぞ」
「それはルリシアさんの試練に合格してから言ってください」
「そうだな」
なるほど。俺の情報源はガーランドさんだったのか。ボルゲーノさんは優秀な人材を探しているから、冒険者ギルドのギルドマスターと繋がっててもおかしくはないよな。
「ルリシア様はやると決めたら猪突猛進⋯⋯いや、真っ直ぐなお方だから油断するなよ」
「はい。必ずルリシアさんの護衛になってみせます」
「良い返事だ。それと今日休む部屋を用意させる。こちらへ来てくれ」
「わかりました」
そして屋敷の一室へに案内された俺は部屋で少し休む。するとメイドさんから夕食の準備が出来たと言われ、食堂へと向かった。
食堂に到着すると、笑顔で機嫌が良さそうなルリシアさんの姿があった。
「ボルゲーノの屋敷の料理は美味しいわよ。ユートくん楽しみにしててね」
「本当ですか? すごく楽しみです」
「とりあえず座って座って」
俺はルリシアさんの隣に座るよう促される。
もしかして食べている時に攻撃してくるつもりなのか?
せっかくの料理を台無しにしたくない。対処する時は料理をぶちまけないよう気をつけないと。
「ユートくんお水飲む? 私が注いであげるわね」
ルリシアさんは、ウォーターポットに入っている水をグラスに注いでくれた。
「はい、どうぞ」
俺はルリシアさんからグラスを受け取った。
すると
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