第19話 ユートVSルリシア(2)
ん? 何故
ルリシアさんは俺を攻撃するような様子はない。
どういうことだ?
ルリシアさんはただグラスに水を注いで、俺に渡そうとしただけ⋯⋯はっ! まさか!
そういうことか⋯⋯
とりあえず原因はわかったので、俺は現れた古文書からカードを四枚引き、最初のページにセットする。
すると時が動き出した。
「あれ? 本が浮いてる?」
「気にしないで下さい。これは僕が出した物なので」
「そうなの? 何の本なのかな?」
「それは秘密です」
「え~気になるなあ」
どうやらルリシアさんは、俺がカードを使うことを知らないようだ。
それなら好都合。俺はやりたいことをやるだけだ。
俺は四枚のカードの内一枚を手に取る。
「真実の眼」
カードを使うと目に入った物の情報が入ってきた。
真実の眼⭐2は物の能力を見ることが出来る。
俺はこのカードの力を使ってある物を見る。すると予想通りのものが目に入ってきた。
「私も喉が渇いたから水を飲もうかな」
ルリシアさんはテーブルに乗っている、水が入ったグラスに手を伸ばした。
これはチャンスだな。
「あっ! ルリシアさんの肩に何かついてます」
「えっ? 本当?」
「うん。取るので後ろを向いてもらってもいいですか?」
「お願いしてもいい」
ルリシアさんは後ろを向き、俺が取りやすいように少し屈んでくれる。
その隙に自分のグラスとテーブルにあるグラスをすり替える。
「どう? 取れそう?」
「ごめんなさい。気のせいでした」
「そうなの」
「うん。それにしてもルリシアさんの髪って、サラサラしてて凄く綺麗だね。髪型もルリシアさんに似合ってるし、こんなに可愛い人初めて見たよ」
俺は子供らしく、思っていることを口にする。
「そう? ありがとう。褒めてくれて凄く嬉しい」
褒められ慣れているのか、冷静に返された⋯⋯と思ったらそうでもなかった。
顔が赤くなっているし、俺と目を合わせてくれない。
「な、何だか熱いね」
そしてルリシアさんは、テーブルの上にあるグラスに手を伸ばす。
すると一気にグラスの中にある水を飲み干した。
「えっ? ユートくん?」
ルリシアさんは俺が突然迫ってきたことで、少し困惑した表情を浮かべている。
「どう⋯⋯した⋯⋯の⋯⋯」
そして言葉が途切れ途切れになると目が閉じ始め、その場で崩れ落ちる。
だけど俺はその未来を読んでいたので、ルリシアさんが床に倒れる前に抱き止めた。
やれやれ。まさか睡眠薬を使って俺を倒そうとするとはな。
そう、ルリシアさんはグラスの水の中に睡眠薬を入れて、俺に飲まそうとしたのだ。
すると予想通りだったので、俺は肩に何かついていると嘘をつき、ルリシアさんが後ろを向いている隙に、テーブルの上にあったグラスと入れ換えたのだ。
そしてルリシアは自分が入れた睡眠薬を飲んでしまい、今に至る。
「さて、ルリシアさんをベッドに連れて行かないとな」
このままという訳にはいかないだろう。それに⋯⋯
今の俺は倒れそうになっているルリシアさんを抱き止めているため、胸に顔を埋めている状態になっている。
こんな所を誰かに見られたら⋯⋯
はっ!
俺はドアの入口付近に気配を感じると、そこにはメイドさんが立っていた。
げっ! これはまずいのでは。
メイドさんが睡眠薬の件を知っていれば何も問題はないけど、もし知らなかったら、俺がルリシアさんに迫って抱きしめた構図に見えてもおかしくない。
俺は誤解を解くため、メイドさんに話しかけようとするが⋯⋯
「ル、ルリシア様が⋯⋯まさか年端もいかない子と禁断の恋!」
残念ながら後者の方だった。しかも何故か嬉しそうに見えるのは気のせいか?
「どうしましょうどうしましょう。このことは私だけの胸に隠しておいた方が⋯⋯それともボルゲーノ様に報告を⋯⋯でもお二人の仲を裂くことなんて私には出来ないわ。どうすればいいのかメイド長に相談しましょう」
「あっ! ちょっと!」
俺はメイドさんを呼び止める。しかしメイドさんは脱兎の如く食堂から立ち去ってしまう。
そしてボルゲーノさんが来たので状況を説明したが、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます